<東海第二原発 再考再稼働>(30)判決指摘の課題を共有 常陸太田市長・大久保太一さん(81)

2021年5月8日 07時44分
 東海第二原発を巡り、水戸地裁が避難計画の不備を理由に日本原子力発電(原電)に運転差し止めを命じたが、計画の策定が義務付けられている常陸太田市など三十キロ圏内の各自治体では、まだ作っている最中だ。それなのに、なぜ結論めいたことを言われなければいけないのか。どのようにできあがるのかは、まだ分からない。
 市では二〇一八年に、大子町と福島県内の二十自治体を避難先とする計画を公表した。だが、あくまでも基本計画。判決では策定済みの自治体とされたが、計画が完成したとは思っていない。
 基本計画を柱として、市民や職員の避難時の行動計画を作っていく。そのために、基本計画は早い段階で示さなければならなかった。
 実効性ある避難計画にするために、机上で考えた計画に基づいて訓練して課題を抽出している。また、アンケートを実施して、事故時における市民の行動や、自家用車が使える人とそうでない人の割合を把握するようにしている。
 課題を把握しながら、その一つ一つに対して解決策を積み上げて、ある程度の段階で訓練をして、また課題を抽出する。それを繰り返して質を高めていく。本年度は、福島県内の避難先に行く訓練を予定している。
 水戸地裁は「策定された計画でも災害対策本部の機能維持や複合災害時における代替避難経路の確保など課題がある」と指摘している。市としても課題と感じていたのは事実。福島県内の避難先自治体にあいさつに行った際に雪が降っており「こんなところに車で避難しろなんて言えるのか」と思って帰ってきた。
 県の方針では「自家用車を中心に避難計画を作りなさい」としている。だが、雪が降れば避難は難しくなる。冬用タイヤを持っている人もいれば、いない人もいる。ノーマルタイヤで雪道を避難すれば、二次災害につながる恐れもある。そういうことも含めて行動計画は作っていく。本当に安全に避難ができる計画を作らなければならない。
 原電は二〇二二年十二月までに防潮堤などの工事を終えるとしているが、そのスケジュールは関係ない。実効性ある避難計画をできるだけ早く作りたいが、実効性があると認められるまでの作業は大変で時間がかかる。
 東海第二は運転開始から四十年以上がたち、老朽化が指摘されている。だが、技術屋は四十年でだめになるような設計はしない。工業製品とはそういうものだ。
 原電には、再稼働後のヒューマンエラーを防ぐための対応を説明するよう求めたい。また、各自治体の首長が事故時に市民の命を守るために、避難すべきか素早く判断するのに必要な情報を早く出すようにしてほしい。
 今月で市長を引退する。東海村に隣接する常陸太田市は、再稼働の際に事前了解が求められるが、辞めていく私が申し送りすることはしない。次期市長が、判断やプロセスを決めてほしい。 (聞き手・松村真一郎)
<おおくぼ・たいち> 1939年、常陸太田市生まれ。茨城大文理学部卒業後、日立製作所旧水戸工場副工場長や常陸太田市議を経て、2005年の市長選で初当選。現在4期目で、今月21日の任期満了をもって引退することを表明している。
      ◇
 次回は七月下旬に掲載予定です。

PR情報

茨城の新着

記事一覧