「警察から力を奪うのはばかげたこと」 米国で波紋「ブルー・ライブズ・マター」指導者に聞く 

2021年5月8日 20時10分
 【ニューヨーク=杉藤貴浩】「ブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命も大切だ)」運動が盛り上がり、警察の差別的取り締まりへの批判が高まる米国で「ブルー・ライブズ・マター(警官の命も大切だ)」と訴える運動が波紋を呼んでいる。黒人男性暴行死事件で警官に有罪が下り、バイデン政権も警察改革を目指す中、あえて声を上げる理由は何か。運動の指導者に聞いた。

オンラインインタビューで「警察に差別はない」と話すジョゼフ・インペラトリス氏=杉藤貴浩撮影

◆警察関係者や保守層に広がり

 ブルー・ライブズ・マターは、犯罪捜査や容疑者逮捕といった危険任務に携わる警官など法執行官を擁護、支援する運動。ブルーは警官の制服の色にちなむ。昨年5月のジョージ・フロイドさん暴行死事件で一気に拡大したBLMに対抗する動きとして、警察関係者や保守層に広がっている。
 2015年に非営利団体「ニューヨーク市ブルー・ライブズ・マター」を創設した現職警官ジョゼフ・インペラトリス氏(36)がオンライン取材に応じた。

◆BLMは「善意で始まった運動」

 同氏は、フロイドさんの首を膝で9分以上押さえつけて死なせた白人警官デレク・ショービン被告(45)の行為について「警官の最大の仕事は命を守ることだ。全く受け入れがたい」と明言。警察擁護の立場からも有罪評決を容認する姿勢を示した。ただ、BLMに対しては「善意で始まった運動だと思うが、警察が悪いという思想には反撃する」と述べた。
 フロイドさんをはじめ、黒人などの人種的少数派が警官の実力行使の犠牲になる事件が絶えないが、同氏は「(警察には)人種差別の問題はない」と強調。「黒人やヒスパニック系は人口割合以上に犯罪に関与している」と持論を示した上で、現場の警官は肌の色に関係なく取り締まりを遂行しているだけだと主張した。

◆「大都市では犯罪は制御不能」

 だが、バイデン大統領が議会演説で不正な取り締まりが疑われる警官の責任を追及しやすくする法案成立に意欲を示すなど、警察改革を求める声は強まっている。インペラトリス氏は「大都市では互いを撃ち合っているような状況で、犯罪が制御不能になっていることを政治家たちは理解していない。警察から力を奪うようなばかげたことはやめなければならない」と憤った。
 警官の過剰な実力行使の背景にあるとされる銃社会についても「事件の多くは違法な銃で起こる。(合法に取得された)銃への規制を厳しくしても悪者を追い払うことはできない。バイデン氏は的外れだ」などと述べた。

◆「対BLM感情で生まれた」 識者は分断の一つと指摘

 ブルー・ライブズ・マターについて、警察に詳しいネバダ大法科大学院のフランク・クーパー教授は「警察は差別的で暴力的だとするBLMからの批判に対抗する感情から生まれた」として、米国で広がる分断の一つとの見方を示す。
 基本的には警察擁護の運動だが、保守層に支持されていることから「右翼や白人至上主義団体が浸透を狙っているとする研究がある」と指摘。「論理的には、(差別的な傾向のある)陰謀論のQアノンとも支持者の重複があると考えられる」と述べた。
 また「ブルー・ライブズ・マター支持者は共和党支持層のかなりの部分を占める」と述べ、警察改革や銃規制に対抗する主因となっている可能性を指摘した。

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