LGBT法整備、与野党で大きな隔たり 自民「まずは理解増進」、野党「実質的な差別解消を」

2021年5月9日 06時00分
 LGBTなど性的少数者が職場や学校、地域で直面するいじめや差別をなくすための法整備を巡り、与野党の協議が大詰めだ。野党が差別解消を訴え提出した法案に比べ、自民党が今国会での成立を目指す法案は「理解増進」が主目的で、差別解消へのアプローチや実効性に大きな隔たりが残る。「多様性と調和」を基本コンセプトに掲げる東京五輪を前に、ぎりぎりの調整が続いている。(奥野斐)

◆「五輪前に結果」目指し協議大詰め

 「五輪前になんとか結果を得たい。実質的な差別解消、LGBT平等法といえる内容にできるよう頑張る」。先月27日に国会内で開かれた集会で、野党案の筆頭提出者の西村智奈美衆院議員(立憲民主)が力を込めた。4月半ばから、自民党特命委員長の稲田朋美衆院議員と週2回ペースで協議を繰り返す。
 2018年12月、当時の野党5党1会派で法案提出をしたものの、伝統的家族観を重んじる保守層が多い自民は「理解増進」を柱に議員立法の制定を目指す考え方を掲げ、審議はたなざらし状態だった。

LGBT法整備を求める院内集会で発言する「LGBTに関する課題を考える議員連盟」の国会議員ら=4月27日、東京・永田町の参院議員会館で

 「『差別禁止』といった瞬間に自民党内で法案は通らないだろう。安易に差別者のレッテルを貼ることになり、反対派を余計に刺激する。まずは理解を進めることだ」。自民党に近い保守系の当事者は話す。
 与党の公明党も早期の法整備を促す中、自民特命委は4月上旬、ようやく理解増進法案の要綱を公表した。稲田氏は特命委後の取材に「党内でかなり理解が深まっていると思う」と成立へ意欲を見せた。

◆「理解増進では差別的扱いはなくならない」

 一方、野党案は行政や企業などによる性的指向や性自認に関する差別的な取り扱いを禁止。「理解増進」が努力義務なのに対し、事業者などに報告を求め、助言、指導、勧告ができるよう実効性も確保する。西村氏は取材に「理解増進は否定しない。ただ、現にあるいじめや差別をなくすための法律が必要」と話した。
 院内集会には与野党の国会議員33人が出席。両案の違いを指摘する声も複数上がった。参加した日本文学研究者で同性愛者のロバート・キャンベルさんも「理解の増進を目的としただけの法案ならば、今ある差別的な扱いはなくならない」と指摘。差別禁止法を求める当事者らからは、「理解増進では逆に、社会の理解が進んでいないと、同性婚やLGBT施策に後ろ向きな自民党の口実にされる」との声も聞かれる。

◆「採用試験受けないで」と言われて

 性的少数者への差別や偏見は身近に根強くある。埼玉県に住む就活中の大学生は3月、ある企業の説明会で、戸籍上は男性で、女性として生活するトランスジェンダーだと打ち明けた。すると、人事担当者に性別適合手術の有無を聞かれたうえ、「そんな人、見たことがない」「あなたみたいな人を雇ったら、わが社はやっていけなくなる。(採用試験を)受けないでほしい」と言われたという。
 就活中、「(採用で)性別を気にしない」と回答したのは10社中、2社だけ。普段は女性として周囲から受け入れられているこの学生は「話さなくて済む内容を明かさざるを得なかったうえ、嫌な思いをしても泣き寝入り。採用時点で機会に差があるのはつらい」と語った。

◆80ヵ国超が制定

 世界では80カ国以上で性的少数者に関する雇用差別を禁じる法律がある。LGBT法連合会の神谷悠一事務局長は「差別や当事者の抱える困難がなくなり、生活が改善する実効性ある法律にしてほしい」と求めた。

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