時代に響く歌 NHK「みんなのうた」60年

2021年5月9日 14時29分
 1961年のスタートから60年を迎えたNHKの「みんなのうた」は今なお、幅広い年代に支持されている。テレビとラジオのミニ番組から1500曲以上を送り出し、時代を代表するような歌も生まれた。あなたにとっての「みんなのうた」とは何ですか−。 (鈴木学)
 「『みんなのうた』は、それ自体が一つのジャンルに思えるんです」。「V6」の井ノ原快彦は確信ありげに語った。
 V6は一九九七年、番組で流れたバンド「AGHARTA(アガルタ)」の「WAになっておどろう〜イレ アイエ〜」をカバーしてヒット。二〇一七年四、五月には「太陽と月のこどもたち」が放送された。この曲は、井ノ原がそれ以前から、番組で作詞者らクリエーターをチェックしたことが制作のきっかけになった。
 そして今年、井ノ原はその歴史を振り返る「みんなのうた60」プロジェクトで、魅力を伝える「アンバサダー」を託された。「誰もが楽しめて元気が出て、世代を超えて一つになれる歌ばかり。いつの間にか体に染みこんでいる」。それが番組発信の楽曲の特徴といい、パッと思い浮かぶのは「北風小僧の寒太郎」だという。

「北風小僧の寒太郎」(アニメ:月岡貞夫)

 番組は六一年四月、チェコ民謡「おお牧場(まきば)はみどり」と、谷川俊太郎作詞の「誰も知らない」から始まった。「子どもたちに明るく健全な歌を届ける」狙いで、歌と映像の組み合わせは「ディズニー映画などを参考に、アニメーションを付けると世界が広がると演出に取り入れたと聞いています」と、担当するNHKエンタープライズの関山幹人「みんなのうた」統括。“元祖ミュージックビデオ”と称されることもある。

♪世代をつなぐ懸け橋

「太陽と月のこどもたち」(映像:鈴木哲ほか)

 長寿の秘訣(ひけつ)について、社会学者の太田省一は「元々小学生以下が対象だったが、中高生や大人にも響く歌手の歌を加えたり、流行を取り入れたりと、進化し続けたこと」とみる。親子で見聞きしたり、時を超え歌手を替えてリバイバルしたりと「世代をつなぐ懸け橋になっている」とも分析する。五分間のミニ番組だが、「短い映像に慣れた現代人に合っている。時代が巡って逆に最先端な感じもある」と話す。

「Can you see? I’m SUSHI」(アニメ:クリーチャーズ)

 スポンサーの絡みなどのないNHKだから続けられることもあるのだろう。テレビ解説者の木村隆志は、それも踏まえた上で「『ちいさい秋みつけた』『北風小僧−』のように季節を大事にする一方で、毒気がある作品もあるなど、楽曲は豊かで創作性が高い。それを放送局自体が仕掛けているところがすごい」と称賛する。

♪NHKの音楽番組の魂

「愛w君(アイダブリュー)」(映像:くろやなぎてっぺい)

 「NHKにとっては、『紅白歌合戦』などと同じく音楽番組の魂で、アイデンティティー。視聴者にとっても幼少期から見ている人が多いだけに、やめたらたたかれると思う。費用対効果までいうと、問題が出るのかもしれないが、最近の『パプリカ』など各年代で結果も出してきている」とも語る。
 「みんなのうた」は、総合、Eテレ、FM、ラジオ第2で放送。二カ月ごとに曲を替え、最近は懐かしい歌も流している。
 「還暦」を経た番組の今後について、関山統括は「『みんなのうた』は、時代の空気を歌で伝えていく番組。近年でいえば、ネットの世界で活躍する人と組むとか、海外の人にも分かる歌にしようとか。今後も時代に響く歌をつくっていくと思います」と強調した。 (敬称略)

◆古びないネーミング タケカワユキヒデに聞く

 「ゴダイゴ」のヒット曲「ビューティフル・ネーム」(一九七九年)はじめ、「ニルスのふしぎな旅」(八〇年)、「ラ(LA)・ラ(LA)・ラ(LA)」(九〇年)、「きみはミラクル!」(二〇一五年)に歌や作曲で携わっているタケカワユキヒデに聞いた。
 ◇ 
 僕の場合、「みんなのうた」用に手掛けたのは「きみはミラクル!」くらい。国際児童年に絡めて依頼された「ビューティフル・ネーム」が「みんなのうた」でも流れたように、転用のパターンが多いけれど、どの歌もみんなで歌えるってことは共通している。

「ビューティフル・ネーム」(アニメ:毛利厚)

 「学校で歌われる歌」が僕の「みんなのうた」のイメージだから、「ビューティフル・ネーム」がかかる時は「そぐわないな」と思ったね。ただ、番組を見て育った人や世代には自分の歌がかかることがステータスかもしれない。「『みんなのうた』って何?」と聞かれれば、「みんな」でくくれる番組があまりない中でも、みんなに歌を届けようとしている番組かな。
 ネーミングがいいよね。どういうふうに変わっても、歌はみんなのためにあるのだから。古くならないし、長く続く理由もそこにある気がする。 (談)

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