<くるみのおうち>(7)「くるみ」設立 明るい未来「きっと来る!」 多くの仲間と新たなつながり

2021年5月9日 14時40分

「くるみ−来未」会員らが参加した焼きそば作りイベント。(左)は中学時代の直樹さん=2014年11月(太田修嗣さん提供)

 仲間集めに奔走していた時のことです。「どうしてNPO法人をつくりたいんですか」。そう尋ねられた私は、泣きながら「私と同じようなつらく、悲しい思いを他の人にはしてもらいたくないからです」と答えていました。
 なぜ円満だった家族が壊れなければならなかったのか。なぜ障害が「いけないこと」のように思われてしまうのか−。自閉症のわが子との二人暮らしで、今の社会の「生きづらさ」に直面してきました。きっと私たちだけの困り事ではないし、専門家やボランティアの力なくして解消されないと痛感していました。
 NPO法人の設立には、最低十人の構成員が必要です。息子の直樹とともに多くの福祉関係者に会いに出向き、思いを一生懸命に伝え、仲間になってもらいました。そうして一年半後の二〇一四年、当事者の親や教員、専門家など十二人が集まり、設立総会にこぎつけることができたのです。
 団体名は、メンバーの投票で「くるみ−来未」に決定。「どんな人にも明るい未来が『きっと来る!』」と強い思いを込めました。
 活動はあくまで、息子と私が「こんな場があったらいいな」と思うもの、かつ無理せず、楽しくできることを基本に考えました。最初に思いついたのは、お弁当作りです。中学校の特別支援学級に進学した息子のために、毎日お弁当を作っていました。大変だけど楽しかったので、これなら日常生活の延長でやれると思いました。
 ほかにも、当事者や家族向けにアウトドアクッキング、おこづかいゲームなどを開催。支援者や地域向けには、発達障害を理解してもらう講演会・研修会に出向き、啓発映画の上映会も行いました。
 そうした活動を通して新たな協力者とつながり、新たな活動を生み出す好循環が生まれました。息子にとっては多様な仲間とふれあい、さまざまな体験ができる貴重な機会になりました。私自身も多くの仲間とつながり、互いに支え合うことができました。
 子育ては一人ではできない。仲間を頼っていいし、むしろ頼るべきなんだ。そもそも人は誰にも迷惑をかけずに生きることなんてできないのだから、一日一日を感謝して過ごそう。そのような思いや考えが、自分の内面に形作られていきました。それは、息子と過ごす日々によってもたらされた変化でした。(太田修嗣・NPO法人「くるみ−来未」理事長)
 ◇次回は16日に掲載予定
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