<さいたま市長選 132万人県都の選択>(下)地下鉄7号線延伸 迫る決断の時期

2021年5月9日 15時05分
 「市の発展のため、ぜひとも手続きを早期に実行いただきたい」「あとは市長が決めるだけ」「何でこの三年間やってなかったんだというのが率直な思い」−。四月二十三日、さいたま市内で開かれた「地下鉄七号線延伸実現に向けた関係者意見交換会」で、清水勇人市長は県内政財界の代表者から集中砲火を浴びた。
【関連記事・連載さいたま市長選 132万人県都の選択】
(上)待機児童問題 「保活」の半年、「必死」 (中)防災 自治会任せは先細り
 二〇一八年五月、市が設置した外部有識者らの協議会は、地下鉄七号線(地下七)延伸の採算性や費用対効果を試算した五案のうち、二案は目安を上回るとする報告書をまとめた。しかし、延伸に必要な市から鉄道事業者への事業化要請は出されないまま。意見交換会の一幕は、「市長の決断が遅くて実現しない」という関係者のいら立ちが噴き出した形だ。清水氏が「機が熟しつつあることは認識している」と答えると、国会議員や商工会関係者は「『つつ』ではなく、熟している」とさらに過熱した。

岩槻区内各地にある地下鉄延伸を呼び掛ける看板

 埼玉高速鉄道(SR)の浦和美園駅(緑区)から東武野田線の岩槻駅(岩槻区)までの七・二キロを結ぶ延伸計画の発端は、地下七を「埼玉方面に至る路線」とした一九六八年の国の答申だ。最終的にJR蓮田駅(蓮田市)まで結ぶ計画で、岩槻駅までが先行整備区間となっている。
 計画は二〇〇五年、事業主体だった旧岩槻市を編入合併したさいたま市に引き継がれたが、採算性と約八百六十億円とされる建設費が壁になり、実現していない。建設費は事業者・国・自治体で三分の一ずつの負担になる可能性が高く、その場合は県と市で自治体分を分ける予定だが、それでも市の負担額は百億円以上になるとみられる。
 また、一八年の試算で示された「採算が取れる」という二案は、前提として目白大学キャンパス(岩槻区)近くに設置見込みの「中間駅」周辺の開発による人口増や、「埼玉スタジアム駅」の常設、快速運転の実施などを挙げており、ハードルは高い。
 延伸要望を続けてきた「延伸認可申請事業化実現期成会」の佐伯鋼兵会長(元さいたま商工会議所会頭)は「岩槻区だけでなく、さいたま市、県東部が潤う」と沿線開発による人口増と税収増による経済効果を強調する。市が今年二月、巨額の費用がかかる市庁舎移転方針を発表したことには「本庁舎を新しくしても人口は増えないし、お金を生まない。ランニングコストがかかるだけ」とくぎを刺し、地下七を優先すべきだと力説。同会の中ではSR沿線の川口市が地盤で、延伸を公約に掲げた大野元裕知事の当選で実現可能性が高まったと期待が広がる。
 一方で、沿線予定地選出のさいたま市議は、延伸に賛成ながら「この二、三年で着工できないならやめた方がいい」とも話す。市議は、中間駅付近は市南部で飽和状態のマンション需要を取り込む余地があり、若い新住民が増えれば市全体の新陳代謝が図れると指摘。ただ、すぐ着工しても電車が走り、街ができるのは十年以上先。それ以降ではさいたま市も人口減少に転じている可能性があり、新しい街の開発意義は薄れるとみる。
 岩槻の悲願とされ、政財界が熱望する地下七延伸だが、他地域の市民の関心は高くなく、温度差が大きいのが現状だ。四月にあった意見交換会は、市長選後の六月議会で延伸を決断するよう強く求めて閉会した。新市長には難しい「宿題」が待ち構えている。=終わり(この連載は前田朋子が担当しました)

関連キーワード

PR情報

埼玉の新着

記事一覧