地方の個人情報保護制度が「後退」の懸念

2021年5月10日 06時00分
<ここが論点・デジタル法案>

◆「2000個問題」解決のために

 個人情報の取り扱いを巡り、政府を悩ませてきたのが「2000個問題」だった。
 現在は民間、行政機関、独立行政法人などの対象別に3つの個人情報保護法が存在する。さらに都道府県や市区町村、広域連合は個別に個人情報保護条例を制定している。これら全国に約2000の法令があることで情報共有に支障が生じている状況を意味する言葉だ。
 大量の情報が行き交うデジタル社会に向けてこの問題を解決するため、デジタル改革関連法案に含まれる個人情報保護法改正案は3つの法律を一本化。自治体の個人情報保護制度も同法に統一する。

◆政府の方針に矛盾する条例は廃止

 国会審議では、各自治体の条例の扱いについて議論されている。思想や信条に関わる「要配慮個人情報」の扱いなどで改正法案より厳しい規定を設けている自治体も多く、野党からは自治体の保護制度の「後退」を懸念する声も上がる。
 政府は改正法と同趣旨だったり、逆に矛盾したりする条例は廃止してもらうと説明。法律の範囲内で「地域の特性に照らして特に必要のある場合」に限り、今後も条例で独自措置を講じることが可能としている。

◆監督機能は中途半端?

 今回の改正によって、個人情報の取り扱いを監督する政府機関「個人情報保護委員会」の役割も大きくなる。今までは民間が監督対象だったが、自治体や省庁も対象になるためだ。
 しかし、改正案では行政機関に対してできるのは勧告までで、民間には可能な立ち入り検査や命令ができない。野党は監督の実効性を疑問視している。
 政府は、行政機関に対し同委員会が行うことができる実地調査について「罰則がないことを除けば立ち入り検査と同じ」とした上で「勧告は当然尊重され、実効性が欠けることはない」と強調。現在は150人規模の組織体制は「所掌や権限が大幅に拡大するので、人員や組織を十分に強化する必要がある」としている。(井上峻輔)

関連キーワード

PR情報