核融合 トラブルで実験装置の試運転中断 初プラズマ着火は延期

2021年5月10日 07時16分

超電導コイルのトラブルで試験運転が中断したJT−60SAの本体機器=2020年10月25日、那珂市で

 量子科学技術研究開発機構(量研機構)は、那珂核融合研究所(那珂市)の新たな大型実験装置「JT−60SA」で三月、超電導コイルの動作確認中のトラブルがあり、装置全体の試験運転を中断したと発表した。詳しい原因調査は六月頃に終わる見通しで、三月中に予定していた最初の「プラズマ」着火はそれ以降にずれ込むことになった。
 超電導コイルは、真空容器内でセ氏一億度を超える超高温のプラズマを閉じ込めるための強力な磁場を発生させる電磁石。プラズマ状態で水素の同位体同士を核融合させ、原発よりもはるかに巨大なエネルギーを得るのが最終目的だ。
 量研機構によると、三月九日に実施していたコイルへの通電試験中に電流が増加し、安全装置が作動して電流が遮断。数分後には、コイルが設置されている真空断熱槽内の圧力が〇・〇七気圧まで上昇した。
 四月八日からの調査で、コイル近くの電路に放電の跡が見つかった。電路の接続部の耐電圧に不具合があったのが原因とみられるという。真空断熱槽の圧力上昇は、放電でコイル冷却用の液体ヘリウムの流路に穴が開き、一部が漏れて気化したためと判明した。コイル自体に損傷はなかった。
 量研機構は今後、根本原因の究明を踏まえ、損傷箇所を修復し、再発防止につなげるとしている。
 JT−60SAは、「トカマク型」と呼ばれるドーナツ型の真空容器内でプラズマを閉じ込める方式の核融合実験装置で、二〇〇八年に運転を終えた旧装置「JT−60」の後継として昨年三月に組み立て完了。十二月にはプラズマを発生させて制御する試験に入る予定だったが、新型コロナウイルス禍でヨーロッパの専門家を交えた準備に時間を要し、開始時期を今年三月に遅らせていた。今回のトラブルで再延期になった。
 JT−60SAは、日本とヨーロッパ、米国、中国、インドなどが参加する国際熱核融合実験炉(ITER、フランス)計画と並行したプロジェクト。実験の成果をITERに反映させるとともに、核融合発電の経済性を検証する原型炉に向けた研究も担う。
 文部科学省は本年度予算で、量研機構への補助金としてITERとJT−60SAの関連事業費二百十八億七千六百万円を計上している。 (宮尾幹成)

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