職場に雑談取り戻そう 信頼を築き理解深める

2021年5月10日 07時40分
 テレワークの広がりに加え、出勤しても人との距離を取るよう求められる中、めっきり減ったのが職場での雑談だ。無駄な時間のようにも思えるが、互いの理解を深めたり、仕事へのヒントが得られたりと、働き手や企業にとって重要な役割を担ってきた。職場に雑談を取り戻そうと、さまざまな試みがなされている。 (海老名徳馬)

◆オンライン朝礼

 クラフトビールを製造販売するヤッホーブルーイング(長野県)。コロナ禍前は、毎日の朝礼で自由に話せる時間が三十分あった。「楽しく飲むためのビールを造る会社が、楽しくなくてどうする」と二〇〇九年に始まった。しかし、コロナで大半の社員が在宅勤務に。出荷や製造、広報などの枠を超えて集まっていた朝礼も、部署ごとにオンラインでの開催になった。
 そこで昨年九月から十一月まで週一回実施したのが、名付けて「シャッフル雑談朝礼」。部署に関係なく社員をまぜ、ビデオ会議システムを使って十五分間、話をしてもらう。一グループは最大五人ほどで、毎回九〜十の集まりができた。
 「在宅勤務中、一週間ぶりに外に出ようとしたら、ドアノブにクモの巣が張っていた」。そんな話に画面越しに笑いが起きることも。「普段から話せば人柄が分かり、メール一つとってもやりとりしやすい」と人事総務部責任者の長岡知之さん(41)は言う。シャッフル朝礼は、方法を工夫し近く復活させる予定だ。
 企業の業務改善を手掛けるスコラ・コンサルト(東京)が昨年七月、テレワークを経験した全国の会社員二百三十人に聞いたところ、雑談の時間が「かなり減った」「少し減った」は合わせて84・3%。雑談が減って「かなり不安」は20・0%で、「少し不安」も49・6%に上った。

◆新サービス登場

NeWorkの画面の一部。アイコンを縁取る円の色や記号で相手の状態が分かる(NTTコミュニケーションズ提供)

 こうした声を背景に、NTTコミュニケーションズ(同)は、オンラインで雑談ができる企業向けサービス「NeWork(ニュワーク)」を開発。同年八月から無料で提供している。画面上で自分の状態を、会話を歓迎する「ウェルカム」、話し掛けられてから話すかを決める「フラット」、集中するために話し掛けないでほしい「ゾーン」の三つから選べるのが特徴だ。開発に携わったプラットフォームサービス本部の大野智史さん(38)は「テレワークは相手が話せるかどうかが見えにくいが、それを解消できる」と説明。有料での販売も視野に入れる。
 働き方に関する著作が多い作家の沢渡あまねさん(45)は、雑談を「組織を円滑に回すための信頼関係を築く基盤」と強調する。互いの理解を深めたり、息抜きやミスの防止につながったり。仕事のヒントが得られることもある。
 ただ私生活に踏み込むなどすると、後輩の場合は萎縮する恐れがあるため「上の立場の人は積極的に趣味や失敗を開示して」と沢渡さん。「先週見た映画がね、など自分のことを基にすると威圧感がない」と助言する。相手の話を否定しないことも大切だ。
 会話が苦手なら、相手の言葉を繰り返し、感情を乗せた言葉を添えるだけで距離は縮まる。例えば「トラブル対応で遅くなった」には「遅くまで大変だったね。きょうは早く帰れるといいね」でいい。
 少子高齢化による労働力不足などで働き方は変わり続けている。効率や多様性が重視される中、沢渡さんは「かつてのように、社内のベテランや上司だけが『答え』を持っているとは限らない。組織の内外でつながるため、雑談はより大事になる」と話す。

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