欧州スーパーリーグ構想、なぜ頓挫した? 金満サッカークラブの巨額負債、コロナで悪化

2021年5月10日 17時00分
 世界的な人気を誇るサッカーのスペインとイタリア、英国の強豪12クラブが先月、仲間内だけで対戦する「欧州スーパーリーグ」構想をぶち上げ、各界の猛反発で撤回に追い込まれた。新型コロナウイルス禍で経営が悪化した金満クラブのエゴが前面に出た騒動を、スポーツビジネスに詳しいフランス高等教育機関「スポーツ権利・経済センター」代表のディディエ・プリモー氏(60)とともに振り返る。(パリ・谷悠己)

欧州スーパーリーグ構想 発起人の12クラブが連名で4月18日に発表。20クラブが各国リーグの合間の平日に開催する計画だった。国際サッカー連盟(FIFA)やファン、選手のほかマクロン仏大統領やジョンソン英首相ら政界も猛反発し、新リーグ側は21日に構想見直しを発表した。

4月19日、英リーズで、欧州スーパーリーグ構想への参加に反対し、レプリカのユニフォームを燃やすリバプールのファンら=AP

◆人気クラブの好カードが毎週、高収入も保証

 「40億人以上のファンを持つスポーツのビッグクラブとして、ファンの願いをかなえる責任がある」
 新リーグの会長を名乗るスペインの名門レアル・マドリード会長のペレス氏は、構想の発表資料でこう宣言した。世界屈指の選手を擁するクラブ同士の好カードが毎週実現するため、「現在ある欧州の国際大会より大幅に高い収入が保証される」とも記されていた。
 現行の最高峰大会「欧州チャンピオンズリーグ」には50カ国以上のリーグで上位に進出したクラブが参加し、賞金総額は20億ユーロ(約2600億円)規模に上る。だが、収入増加に貢献した一部の人気クラブには分配が少ないことへの不満がくすぶっていた。プリモー氏は「数年前から新リーグを模索してきたクラブらの経営がコロナ禍で悪化し、具現化を急いだのではないか」と分析する。

◆収入も負債も巨額

 仏紙フィガロによると、新リーグ発起人の12クラブは欧州全クラブの収入ランキング(昨季終了時点)の上位ばかり。トップのスペイン・バルセロナは7億1500万ユーロで、Jリーグ最多(2019年度)ヴィッセル神戸の8倍以上を稼いだ。
 一方、負債額も膨大だ。伊紙ガゼッタ・デロ・スポルトによると、昨季終了時の12クラブ合計は57億ユーロ。コロナ禍でさらに悪化した現在の負債は、バルセロナだけで11億ユーロに上ると報じられている。
 新リーグには米金融大手が出資し、発起人の12クラブにはコロナ禍からの復興資金として35億ユーロの分配が予定されていた。短期で収支を改善する秘策として構想された形だが、プリモー氏は「問題はもっと根本的だ」と指摘する。
 欧州サッカー界には米プロスポーツのようなサラリーキャップ(給与上限)制度がない。プリモー氏によると、外国籍選手の登録制限が欧州連合(EU)域内国籍のある選手には緩和された1990年代後半以降、選手の代理人による移籍ビジネスが過熱化。年俸170億円超とされるバルセロナのメッシ選手ら有力選手の給与が高騰し、獲得費捻出のため経営に無理が生じたクラブが多いという。

◆ファンの思い、オーナーが見誤る

 08年のリーマン・ショック以降は、資金力のある米国やアジア出身オーナーに買収されたクラブも相次いだ。チーム強化や日本など全世界でのファン拡大に成功したが、プリモー氏は「足元の欧州には強豪同士だけの対戦より多様なクラブに開かれたリーグを求めるファンが多いことを、外国人オーナーが多い新リーグ側が見誤ったことも構想失敗の一因だ」と話す。

ディディエ・プリモー氏=本人提供


 肥大化した金満クラブの経営を健全化する道はあるのか。プリモー氏は「サラリーキャップの導入や選手の移籍制限が必須だが、EUや加盟国の政治が介入して法体系を変える必要がある。騒動によって問題が表面化した今が、その好機ではないか」と期待する。

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