「五輪ファースト」指摘に、首相が反論「大変失礼だ」 中止・延期に言及はタブー? 開催条件の答弁も回避

2021年5月10日 20時53分
 新型コロナウイルス禍が長期化する中、10日に衆参両院の予算委員会で開かれた集中審議。東京都などへの緊急事態宣言の延長が決まったことを受け、2カ月半後に迫った東京五輪を無事に開催できるのかが論戦の焦点になった。菅義偉首相は「安心・安全な大会」の実現に決意を示すばかりで、開催が可能な感染状況の条件には言及しなかった。(山口哲人、川田篤志)

◆立民代表「五輪と感染対策、両立は不可能」

 「来日する皆さんの命と健康、国民の命、暮らしを守ることと、五輪・パラリンピック開催を両立させることは不可能と言ってもいいのではないか」
 立憲民主党の枝野幸男代表は衆院予算委で、無観客でも選手や関係者ら数万人規模の参加が見込まれていることを踏まえ、こう指摘した。「私も五輪を見たい。しかし、感染対策が不十分になって、感染がさらに広がったり、倒産や失業が増えたりすることは許されない」とも訴えた。
 枝野氏が追及を強めたのは、首相が大会開催の可否を判断できるのは主催者の国際オリンピック委員会(IOC)などだと説明し、日本政府に権限がないと主張しているからだ。
 この日も首相は「安心・安全な大会が実現できるよう全力を尽くすのが私の責務」などと精神論を展開。中止や延期といった選択肢に言及するのを「タブー視」するかのような姿勢を崩さなかった。枝野氏は、入国規制や行動制限は「政府が独立して判断すべきだ」と迫ったが、答弁は変わらなかった。

◆10回近く質問されても…はぐらかし

 五輪を成功させ、秋までに行われる衆院選につなげるのが政権の基本戦略とみられ、枝野氏を継いだ立民の山井和則氏は「頭の中は『五輪ファースト』でコロナ対策が二の次になっている」と指摘。すると首相は「大変失礼だ」と色をなして反論した。しかし、感染状況がステージ3(感染急増)やステージ4(爆発的感染拡大)でも五輪を決行するのかと10回近く質問されても「選手や関係者の感染対策をしっかり講じる」などとかわし、最後まで直接答えなかった。
 参院予算委では、立民の蓮舫代表代行が「首相が(IOCに)中止・延期も含めて相談する機会を設けたらどうか」と提案した。だが、首相は政府が検討している対策の説明などで、はぐらかし続けた。共産党の山添拓氏は「中止の検討すらせず、IOC任せで主体的に判断しようとしないのはあまりにも無責任だ」と批判した。

◆専門家の声を軽視

 五輪開催へ感染拡大防止に全力を尽くすと政府は強調するが、専門家の声を軽視する傾向も改まらない。
 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、宣言解除の目安としてステージ2(感染漸増)まで引き下げるのが望ましいと指摘するが、首相はこの日も「ステージ3になることが目安」と従来の方針を堅持。8日に公邸で面会した専門家も、徹底した感染者数の抑え込みが中長期的な経済立て直しに有効との見解を示したが、首相は答弁で「いろんな話を聞いている。最も効果があることを実行に移したい」と話すにとどめた。

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