<社説>出生前診断 当事者への支援十分に

2021年5月12日 07時17分
 妊娠中の胎児の染色体異常を調べる出生前診断について厚生労働省の専門委員会が報告書をまとめた。国が診断の適切な利用に関与する内容だ。妊婦らの意思決定を支える制度づくりを進めたい。
 出生前診断は、妊婦の血液に含まれる胎児のDNAを検査して、ダウン症などの原因となる染色体異常を調べるもので、日本では二〇一三年に導入された。
 これまでは関連学会の指針に基づき、原則三十五歳以上を対象にカウンセリング体制の整った施設に限り認められてきた。この制度ですでに八万人以上が検査を受け、染色体異常の陽性と確定した妊婦の多くが中絶している。
 一方、認定施設以外の民間クリニックの参入も増えてきた。出産の高齢化で検査への関心が高まるとともに、医療技術の進歩で手軽に検査が受けられるようになったためだ。
 ただ、これらの医療機関では、検査に関する情報が十分に提供されなかったり、検査結果について妊婦に対するカウンセリングが不十分だったりして混乱を招くケースもあり、問題化している。
 検査で何が分かるのか、結果をどう理解すればいいのかなど、妊婦や家族が直面する課題に寄り添い、当事者の意思決定を十分に支えることが必要だ。ダウン症についての正確な理解も欠かせない。
 当事者への支援が不十分な検査の広がりは放置できない。制度づくりへの国の関与は当然だ。
 国は今後、検査を実施できる施設の認証制度も新設し、新制度の運営組織を今夏にも発足させる。検査に関する相談や情報提供も強化する。国はこれまで情報提供が障害者差別を生みかねないとして積極的に周知してこなかったが、約二十年ぶりに見直す。
 インターネットなどの普及で検査に関する情報が得やすくなった半面、不正確な情報に振り回されるリスクも高まっている。正確な情報を提供する方が検査の適切な利用につながるだろう。
 日本ダウン症協会は出生前診断によりダウン症が出産するか否かの選択を要する障害との誤った理解が拡散しかねないと懸念する。国はダウン症に関する誤った理解が広がらないよう、正しい情報の発信に努めるべきだ。
 妊婦らが安心して利用できる施設の確保に努め、当事者の重い決断を支える体制を整備する。同時に、障害の有無に関係なく、皆が共生できる社会づくりも、待ったなしの課題である。

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