ネットヘイト訴訟 原告の中根さん “司法の判断 希望に” 東京高裁、被告に賠償命令 意見陳述要旨(一部抜粋)

2021年5月13日 07時20分

ヘイト訴訟の控訴審判決で東京高裁に向かう原告の中根寧生さん(中)と弁護団ら=東京・霞が関で

 川崎市内の中学生だった男性へのブログ上のヘイトスピーチをめぐる訴訟で、東京高裁は十二日、一審に続き、匿名で差別記事を書き込んだ大分市の男性に賠償を命じた。現在大学生になった原告の中根寧生(ねお)さん(18)は、多感な時期をネット上の中傷に苦しめられてきた。差別からの回復へ、希望を求めた意見陳述を詳報する。
 二月十五日に中根さんが同高裁で述べた意見陳述は以下の通り(一部抜粋)。
 ◇ 
 僕の父は日本人、母は在日朝鮮人です。僕は小さいころから二つの文化背景があることを家族や学校の先生や友人、地域のみなさんに尊重され、自分でも大切にしてきました。ハーフではなくダブル、半分ではなくふたつで豊かなことと思って生活をしてきました。
 ところが、僕が中学一年生の時に、ヘイトスピーチを行うデモが、僕の暮らす地域に来ました。
 僕は、地域のみなさんや、家族と一緒にヘイトデモ、ヘイトスピーチに反対の行動をしました。僕にとっては、自分自身や大切な家族や友人や地域の人たちを侮辱して差別するヘイトデモ、ヘイトスピーチに反対をして行動することは当たり前の事でした。
 テレビや新聞でそのことを紹介してもらうと、応援してくれる人だけではなく、もっと差別をしてくる人がでてきました。特にネット上で、匿名で母や僕に対するヘイトスピーチがたくさん書きこまれました。
 今回の「写楽」というブログでは「悪性外来寄生生物種」「人もどき」「見た目も中身ももろ醜いチョーセン人」などと、書かれています。僕は悪性外来寄生生物種ではなく、人もどきではなく、中身ももろ醜いチョーセン人ではなく、家族に愛されて、家族を大切に思い生きる人間です。
 さらに「通名などという『在日専用の犯罪用氏名』」と、まるで犯罪者のように書かれました。僕の名前は、母と父が大切に考えてつけてくれた本名です。僕は犯罪者ではないし、通名を使っている人は、みな犯罪者のように印象付けるひどい書き方です。僕の名前人格すべてが否定され、地獄へ突き落とされたような気持ちです。
 警察に相談に行った際に、僕は苦しくて泣いてしまいました。その帰り道、母は「私が朝鮮人だからこんな思いをさせてしまってごめんね」と言いました。僕たち家族にとってこのことは一生消すことのできない深い傷となると思います。
 僕は、こうやって無責任に匿名で隠れて人を差別する人が許せません。僕をおとしめ社会的に評価を落とし、僕と僕の家族を深く傷つけ、名誉を汚したことに対して、高裁ではより厳しい判決が示されることを強く望みます。そのことで、僕自身も家族と一緒に回復に向かいたいと思います。そして差別による名誉毀損(きそん)が司法の場で正しく罰せられることが、差別をなくして社会をよくする希望にもなると思っています。

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