現場からは「連休直前だったから?」の声も 勝田駅員らのクラスター疑いをJR東日本水戸支社が公表しなかった理由

2021年5月13日 07時25分

4月後半に駅員ら8人の新型コロナウイルス感染が判明したJR勝田駅=ひたちなか市で

 JR勝田駅(ひたちなか市)で四月後半、駅員ら八人が新型コロナウイルスに感染したにもかかわらず、JR東日本水戸支社は公表せず、茨城県民や利用者に周知されることはなかった。労働組合は「リスクは速やかに公表するべきだ。公共交通を担う企業の社会的責任と使命を自覚してほしい」と支社の対応を批判する。クラスター(感染者集団)が疑われるケースだが、県が把握するのは遅れた。 (宮尾幹成)

■昨年秋は発表

 水戸支社は、従業員に感染者が発生した場合、その都度、社内向けの業務連絡で知らせているが、詳しい感染経路などは明らかにしていない。
 JR東日本輸送サービス労働組合(輸送サービス労組)水戸地方本部によると、勝田駅(社員数四十人)で四月十五日、自主的に検査を受けた社員一人の感染が判明。支社を通じて報告を受けた保健所は「濃厚接触者なし」とした。
 二十一日に別の二人の感染が確認されたのを受け、JR東が運営するJR東京総合病院(東京都渋谷区)が社員十二人のPCR検査を駅内で実施。泊まり勤務の七人は結果が出るまで、日勤の五人は夕方まで、それぞれ通常業務に従事していたが、同日夜になって三人の感染が分かった。
 翌二十二日以降、残る社員も支社内で検査。この検査の際は、結果が出るまで自宅待機させる対応を取った。二十二日のうちに、さらに二人の感染が判明した。
 感染者計八人のうち五人は、改札や精算など接客を伴う業務を担っていた。
 水戸支社広報室は本紙の取材に、複数の感染者が出ていた事実を認めた上で、公表しなかったことについて「マスクや窓口のビニールシートなど感染対策を徹底しており、保健所とも相談の上、お客さまへの影響はないと判断した」と説明した。
 ただ、支社は昨年十一月十五日、内原駅(水戸市)で精算業務などに当たっていた関連会社の社員一人の感染が分かった際は、その事実を公にしている。広報室は、今回との対応の違いについては「当時は自治体も、感染者の情報を現在より細かく発表していた」と釈明した。
 県は十一月十六日まで、新規感染者について個々の感染経路などを詳細に発表していたが、感染者数の急増を受けて、十七日以降は簡略化した発表方法に改めている。

■東京で計上か

 県感染症対策課は、一つの事業所などで同時期におおむね五人以上の感染者が出た場合、クラスターもしくはその疑いがある事案として、原則として事業所名を伏せて発表している。だが、この時期の県の発表に、勝田駅のケースに該当する事案は見当たらない。
 四月二十一日以降の一斉検査はJR東京総合病院が実施したため、感染者は都内の発生分として計上されているとみられる。だが、都では日々の発生件数が非常に多く、最初の発表では個々の感染者の情報は性別と年代にほぼ限られる。
 その後の経過観察や濃厚接触者の検査などは居住地の保健所に移管されるが、感染確認からタイムラグがある上に、勝田駅の感染者八人のうち五人は中核市の水戸市(保健所業務が県から独立)の住民だったこともあり、県への情報集約が遅れた可能性がある。
 県感染症対策課は「集団感染を把握した頃には既に収束しており、クラスター事案として発表するかどうか検討する時機を逸した」としている。
 勝田駅のケースがクラスターに当たるのか、支社広報室にただしたところ、「それを判断するのは自治体」との回答だった。 
 勝田駅は、阿字ケ浦海水浴場やひたち海浜公園方面に延びるひたちなか海浜鉄道への乗換駅でもあり、コロナ禍で旅行や観光の自粛が呼び掛けられているとはいえ、ゴールデンウイーク(大型連休)には利用客の増加が見込まれていた。
 輸送サービス労組水戸地方本部の黒沢純一執行委員長は「現場の社員からは『連休直前だから公表しなかったのでは』と疑う声も寄せられている」と話す。

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