<社説>インドのコロナ 日本の存在感が薄い

2021年5月13日 08時18分
 インドで、新型コロナウイルスの爆発的な感染が続く。同国はワクチンの輸出を中断して国内接種を優先するが猛威は収まらない。敵対国も支援に動いている中で、日本の存在感は薄い印象がある。
 人口十四億人弱のインドでは今、一日約四十万人がコロナに感染している。死者数も一日四千人前後、累計二十五万人に達する。
 医療崩壊で患者は病院に入りきれず、犠牲者は歩道や駐車場で火葬されている惨状だ。「毎日のように知人の誰かが亡くなったと知らされる」。現地からの報道が伝える国民の悲嘆が切ない。
 一日あたりの感染者は二月までは一万人以下だったが、変異株が発生した影響などで急拡大。インドの変異株は、感染力の増強や免疫の低下を招くとされる。日本でも既に確認されている。
 世界最大のワクチン製造工場を持つインドは当初、アストラゼネカ製を輸出していたが、爆発的な感染拡大で三月に輸出を中断。モディ政権は大規模な選挙集会やヒンズー教の沐浴(もくよく)行事に規制をかけず、感染を広げたと批判された。
 これまでに四十カ国以上が支援に乗り出した。米国は一億ドル(約百十億円)分の医療物資や二千万回分のワクチン原材料を提供する方針を四月に明らかにした。欧州各国も人工呼吸器などを送る。
 いち早く支援を申し出たのは、カシミール地方の領有権で対立するパキスタン。人工呼吸器などを送ると表明した。また、中国は昨年、国境地帯でインドと武力衝突し、四十五年ぶりに死者が出たが今回人工呼吸器など二万六千台と大量の医薬品を発送したという。
 対して日本は、各国に遅れて支援を表明したものの、提供する人工呼吸器と酸素濃縮器は計六百台程度。その後、今月に入って茂木敏充外相が最大五十五億円の無償支援を追加すると表明した。
 インドは、日米豪とともに、民主主義の価値観を共有し、安全保障や経済を協議する四カ国の枠組み「クアッド」の一角。中国への対抗上も、重要なつながりだ。さらに、日本企業は千四百社以上がインドに進出しており、日印の結び付きは強い。この火急の時にこそ、素早く積極的な支援に動くべきではなかったか。
 日本は自国の感染拡大への対応や医療体制の充実に追われ、致し方ない面もある。しかし、国際社会での存在感を保つための戦略も必要であろう。インドの危機は、まだ続いている。できる支援にさらに知恵を絞りたい。

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