<社説>霞が関離れ 組織の体質正す好機に

2021年5月13日 08時19分
 キャリアと呼ばれる国家公務員総合職採用試験への申込者の減少が続いている。若者にとって、「霞が関」の魅力がなぜ薄れているか。それを考えることは、行政の体質改善にもつながるはずだ。
 現在、行われている春の総合職試験の申込者は一万四千三百十人で、前年に比べ14・5%減った。五年連続の減少となる。
 理由はいくつか考えられる。一つは長時間労働だ。内閣人事局は昨年十〜十一月、霞が関の国家公務員約五万一千人を対象に正規の勤務時間以外に在庁した時間を調査した。顕著に長かったのは二十代の総合職。過労死ラインとされる月八十時間を超える職員が三割以上もいた。
 長時間労働の一因とされる国会対応についても調査では尋ねている。国会審議では議員から質問内容が事前に通告され、官僚が答弁を作成する。ただ、通告が遅れることがあり、昨年の臨時国会中、通告の終了時刻が午後八時を超えたケースは36%に上った。
 二十代では自己都合による退職も増加傾向にある。若手官僚に話を聞くと、過労とともに「やりがい」を見いだしにくいという事情もあるようだ。省庁や部署によって違いはあるのだろうが、ピラミッド構造の官僚組織の中で、二十代は「使いっ走り」のような役割になりがちだという。
 民間企業が働き方改革を進め、若手を幹部に登用するところもある中、霞が関の古い体質がより見えやすくなっている。森友問題など「政と官」の関係を巡る不祥事も続発し、進路を選択する学生たちは人生をかける仕事か否かを熟考しているのだろう。
 一方、農林水産省の若手職員がつくるYouTube動画「BUZZ MAFF(ばずまふ)」を見ていると変化の兆しも感じる。大臣会見を鹿児島弁でアフレコするなど奇抜な手法も使いながら、コロナ禍で苦境にある農林水産業への支援を訴える。
 新型コロナウイルスの感染拡大で、弱い立場の人がさらに苦境に立たされる今だからこそ、官僚がさまざまな人の声に耳を傾け、前例踏襲ではない政策立案ができる環境の整備を望みたい。
 国会との関係を見直し、オンライン化による効率化を進めることはもちろん必要だが、それにとどまらず、縦割りや閉鎖性など根強く残る官僚制の欠点を見直す好機にもしてほしい。それは志を抱いて公務員になった人たちの「やりがい」にもつながるはずだ。

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