<幻の名匠・渡辺省亭展 私の一点>(2)力みのない洒落

2021年5月13日 12時54分

《ちぬの浦浪六(うらなみろく)『奴(やっこ)の小万(こまん)』口絵 春陽堂刊》 1892年 多色摺木版 一枚(一冊のうち) 個人蔵

 手元に省亭(せいてい)の春夏秋三幅対があって、折々に床の間に掛けています。省亭については明治の日本画家で、菊池容斎(ようさい)の門人としか知りませんでした。今回、彼が明治初期パリに遊学し、エドガー・ドガの為(ため)の席画やジャポニズムの西洋人に愛好された作品「花鳥魚鰕(ぎょか)画冊」、濤川(なみかわ)惣助との協働による無線七宝作品(赤坂迎賓館花鳥の間七宝額)、さらに一家風(いっかふう)を持つ双幅の書作品「名号」等のあることを知り、認識を改めました。
 私は展覧会で時間のある時は一巡目にゆっくり鑑賞して、二巡目に欲しいと思うものを探します。今回見つけましたのは、明治二十五年刊行の多色摺(す)り木版画でした。−自然な空間構成の中に人物を配置する臨場感ある画風−で、力(りき)みのない洒落(しゃれ)た絵だと思います。この絵を眺めながら私は物語の場面を知りたくなりました。省亭が、不本意ながら引き受けたというのも面白い。(茶の湯 江戸千家家元・川上宗雪(かわかみそうせつ))
※「渡辺省亭−欧米を魅了した花鳥画−」(東京・上野公園の東京芸術大学大学美術館、23日まで)は、緊急事態宣言に伴い臨時休館中ですが、紙上で作品の世界をお楽しみください。展覧会の図録を東京新聞オフィシャルショップで販売しています。購入は同ホームページで。2600円(税込み)。東京展の後は、岡崎市美術博物館(愛知県)、佐野美術館(静岡県三島市)へ巡回します。

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