ハマスのイスラエル攻撃でネタニヤフ首相に逆風 支持回復のために攻撃激化の懸念

2021年5月13日 20時30分
ネタニヤフ首相=AP

ネタニヤフ首相=AP

 【カイロ=蜘手美鶴】イスラエルとパレスチナ自治区ガザの間で続く報復攻撃の応酬で、イスラエルのネタニヤフ首相が正念場を迎えている。イスラム主義組織ハマスによる大量のロケット弾攻撃を防ぎきれず主要都市などが被害を受けたからだ。組閣を巡って野党と駆け引きを続けるネタニヤフ氏は、ハマスへの徹底攻撃で右派の支持をつなぎ留めたい狙いがあり、攻撃の応酬がさらに激化する可能性がある。
 「これはまだ始まりにすぎない」。ネタニヤフ氏は12日、報道陣にこう述べ、攻撃の拡大を示唆した。イスラエルは10日以降、ガザへ空爆を続け、ハマス司令官や戦闘員など30人近くを殺害した。空爆には一般人も巻き込まれ、パレスチナ保健省によると少なくとも83人が死亡した。
 ハマスの攻撃は近年にない規模で、イスラエルに衝撃を与えた。100発以上が対空防衛システム「アイアンドーム」をかいくぐってエルサレム近郊など各地で着弾。約100キロ離れた商都テルアビブにも到達したほか、石油パイラインにも命中。研究用原子炉がある南部ディモナ付近にも着弾した。イスラエルではこれまで計7人が犠牲となった。
 連続12年首相を務める同氏は、ハマスなど敵対する組織に強硬姿勢で臨むことで、右派の支持を固めてきた。今回攻撃を防げなかったネタニヤフ政権には、世論の一部で批判も高まっている。イスラエルでは現在、野党が組閣作業を続けており、首相続投に向けた重要な局面を迎えている。
 アルアハラム政治戦略研究センター(エジプト)のアイマード・ガッド副代表は「今回の事態にどう対処できるかが、ネタニヤフ氏の今後を左右する。支持回復のために激しい攻撃もいとわないだろう」と話す。
 ハマスはイランなどから支援を受けて独自にロケット弾を製造しているとされ、ヨルダン人評論家のザイド・ナワイサ氏は「飛距離や精度が格段に向上している。イスラエルには脅威だったはずだ」と指摘する。
 激化する攻撃の応酬に、国連のグテレス事務総長は12日、「両者の対話を仲介する用意がある」と言及。国連安全保障理事会も同日、緊急会合を開催したが、一致した対応には至らなかった。バイデン米大統領は同日にネタニヤフ氏と電話協議後、「一刻も早い収束を期待する」と述べた。
 イスラエル占領下の東エルサレムでは今月上旬以降、パレスチナ人とイスラエル側の衝突が続き、ハマスの攻撃の引き金となった。

関連キーワード

PR情報

国際の新着

記事一覧