<社説>ガザへの空爆 流血阻止に力を尽くせ

2021年5月14日 07時51分
 パレスチナ自治区ガザをイスラエル軍が空爆し、住民ら六十人以上が死亡した。エルサレムでもイスラエルの治安部隊とパレスチナ住民の衝突が続いている。国際社会は流血の阻止に尽力すべきだ。
 ガザの空爆は、同自治区を統治するイスラム主義組織ハマスなどがイスラエルにロケット弾を発射し、イスラエル人七人が死亡したことに対する報復だ。
 これに先立ち、エルサレムでは大規模な衝突が起きていた。イスラム教徒のラマダン(断食月)終盤の七日、旧市街のアルアクサ寺院での集団礼拝に治安部隊が突入。暴動に発展し、パレスチナ住民ら数百人が負傷した。
 衝突には伏線があった。イスラエルの裁判所が東エルサレムで暮らすパレスチナ人七家族に退去を命じたことだ。命令への抗議が治安部隊に弾圧され、礼拝に集まったパレスチナ人数万人が連帯を叫んだため、衝突につながった。
 エルサレムはユダヤ、キリスト、イスラム各教の聖地だが、国際的な地位は定まっていない。第一次中東戦争(一九四八年)で東側をヨルダン、西側をイスラエルが占領。第三次中東戦争(六七年)でイスラエルが東側を併合し、東西エルサレムを首都と主張しているが、武力による併合を国際社会は認めていない。
 パレスチナ側は東エルサレムを首都とする独立を期すが、イスラエルはその構想に基づく二国間解決を妨げるため、東エルサレムのパレスチナ住民の排除と入植を強行。退去命令もその一環だが、国際法に反する暴挙といえる。
 衝突の背景には、パレスチナ住民の孤立感や焦燥感もにじむ。
 エルサレムの地位を交渉に委ねた米国主導の和平は、トランプ前政権がエルサレムをイスラエルの首都と承認したことで破綻。一部アラブ諸国も対イラン戦略などからイスラエルと国交を結び、パレスチナ問題は後景に退いた。
 衝突の回避に和平交渉の再建は不可欠だ。「脱トランプ」を掲げる米バイデン政権にとっても試金石といえるが、国連の安保理声明を阻むなど、仲介役を果たせていない。日本では中山泰秀防衛副大臣が「私達の心はイスラエルと共にあります」などと、一方に肩入れするツイートをした。軽挙のそしりは免れないだろう。
 十五日は、パレスチナ人が難民となった悲劇を回想する「ナクバ(大災厄)」の日で、流血の拡大が懸念されている。衝突回避に向けて国際社会は結束すべきだ。

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