専門家の突き上げで方針急転、政府の見通しの甘さ浮き彫り 緊急事態に3道県追加

2021年5月15日 06時00分
 政府は14日、新型コロナウイルス緊急事態宣言の対象に北海道、広島、岡山の3道県を追加することを決めた。まん延防止等重点措置にとどめる当初方針を、専門家の突き上げを受けて変更した。政府は意見を尊重したと説明するが、当日の急転回で感染状況に対する菅義偉首相らの認識の甘さを露呈した。(井上峻輔、村上一樹)

◆宣言対象や期間などの根幹を変更

 政府が宣言と重点措置の追加を報告した14日の参院議院運営委員会で、共産党の武田良介氏は当日の変更に関し「政府の見通しが甘かった。対応が後手後手になっている」と指摘。西村康稔経済再生担当相は、専門家らの基本的対処方針分科会の議論に触れ「メンバーのほぼ全員が北海道、広島、岡山は緊急事態という強いメッセージで抑え込んでいくべきだとの意見だった」と釈明した。
 政府側は「専門家の意見を尊重するのは至極当然」(田村憲久厚生労働相)と平静を装う。だが、これまで宣言対象や期間などの根幹部分が分科会で変更されたことはなかった。今回も13日夜、関係閣僚会議がまとめた当初案が決定事項というのが政府・与党の共通認識だった。政府高官は北海道への宣言について、地元側が札幌市に限定した発令を求めていたことを挙げ「宣言は都道府県単位。議題にもなっていない」と断言していた。

◆ちぐはぐな対応、「まん延防止」と期限にズレ

 首相は14日、西村氏から分科会の報告を受けて変更を決めた。これまでも専門家の意見を軽視していると批判を浴びてきた経緯があり、衆参両院の議運委では野党から「現状認識が不十分だ」との声が噴出。西村氏は「連日1時間程度、(新型コロナウイルス感染症対策分科会の)尾身茂会長をはじめ専門家の皆さんと意見交換している。強い危機感も一致している」と反論したが、一連の対応を見る限り説得力を欠く。
 当日の軌道修正により、対策がちぐはぐになった印象も否めない。群馬など追加された3県の重点措置の期限は6月13日。当初案には広島、岡山両県も含まれていたが、緊急事態への切り替えに伴い、先行する都府県と同じ5月31日に設定され、ズレが生じた。重点措置の期限について「1、2週間では効果が分からないから」としていた政権幹部の説明とも、つじつまが合わない。

◆宣言は9都道府県、重点措置は10県に拡大

 4月5日に大阪、兵庫、宮城の3府県に重点措置を適用して以降、政府は毎週のように緊急事態宣言の発令と重点措置の追加を繰り返している。今回の決定で宣言は9都道府県、重点措置は10県と全国に広がることになった。
 場当たり的に見える対応に加え、3道県の短い期限設定により、野党からは早くも「宣言延長が前提か」といぶかる声も上がる。

◆「期限が来たから解除」に専門家が警鐘

 尾身氏は14日の衆院厚労委で、5月で宣言を解除できるかの見通しを問われ「変異株もあるし、解除すれば早晩、リバウンドが起きる。期限が来たから無条件に解除というのは絶対にしない方がいい」と警鐘を鳴らした。

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