<新型コロナ>世界最悪水準から一転…長期間のロックダウン、急ピッチのワクチン接種で大幅改善の英国

2021年5月16日 06時00分
 世界でも最悪水準の新型コロナウイルス禍にあえいだ英国が、状況を大幅に改善させている。新規感染者数は1月のピーク時から30分の1ほどの水準に減少。長期間のロックダウン(都市封鎖)のうちに、急ピッチでワクチンを接種する英政府の合わせ技が奏功した。ただ、新たな変異株による感染再拡大への懸念が強まっており、ジョンソン首相は治療薬開発などの備えを進める。 (ロンドン・藤沢有哉、写真も)

◆1週間の死者数は9000人→230人に

英ロンドン中心街のパブの屋外席で11日、談笑する市民ら

 「永遠に自宅にこもるのかと思ったよ。ようやく楽しみを味わえるようになった」
 ロンドン中心街のパブで11日、地元の技師ミゲル・ガルシアさん(32)がビールを口にした。先月中旬にロックダウンに伴う規制が緩和され、ロンドンのパブは屋外席に限って約4カ月ぶりに営業が可能に。ガルシアさんは「政府は大勢のワクチン接種を実現してるし、もう大流行は来ないと信じたいね」と願った。

 英国では昨年秋から英型変異株が猛威を振るい、各地方が年末年始にロックダウンを導入。生活必需品を扱わない小売店や飲食店は閉鎖され、生活圏外への外出も原則禁止された。1月のピーク時から4カ月ほどで、1週間あたりの新規感染者数は約43万人から1万5500人ほどに減少。コロナが原因と確認された週間の死者数は9000人超だったが、4月末には230人余に減った。

◆「ワクチン部隊」編成で大量接種を実現

 「感染者、死者数の劇的な減少は厳しいロックダウンを長く維持した成果で、ワクチン接種の進展も補完的役割を果たした」と、英ケント大のジェレミー・ロスマン博士(ウイルス学)は分析する。
 ジョンソン氏は1月上旬、国民の大半が住むイングランド地方全土にロックダウンを導入。過去2回は導入遅れや期間の短さを批判されたため、徹底したウイルス封じ込めを狙った。小売店の閉鎖期間は昨年春の1回目より2週間余り長い約3カ月に及ぶなど、段階的な規制緩和を慎重に実施。他の各地方自治政府も同様の対応をとった。
 英政府は同時に、ワクチン接種による感染、重症化の予防に力を注いだ。接種ボランティアの育成や看護師らが各地をバスで回る「ワクチン部隊」編成などで大量接種を実現。コロナ禍を研究する英ノッティンガム・トレント大のロバート・ディングウォール教授は「ロックダウン導入の1カ月半後には、新規感染者の減少にワクチンの効果が表れ始めた」と推測する。

◆新たな変異株で再拡大の予測も

 英国では全成人の3分の2以上が1回目を接種し、各地方は17日から順次、規制緩和をさらに拡大する方針。生活が正常化する中、ワクチン効果がどれだけ感染者増加を防ぐかが焦点だが、多くの科学者は年内の再拡大を予測する。
 主な理由は変異株だ。ロスマン博士は「ブラジル型や南アフリカ型、インド型は感染力が強い上に現在使っているワクチンの効きが悪い恐れがある」と警告。このうちインド型の感染者は増加傾向で、既に国内で1300人以上が確認された。
 対策を急ぐ英政府は、変異株に対する使用中、開発中のワクチンの有効性を研究することを決定。感染者増加に備え、自宅でも服用できる治療薬の開発を支援し今秋までの実用化を目指す。ジョンソン氏は14日の会見で「インド型は、私たちの進歩に深刻な混乱をもたらすかもしれない」と、社会的接触に関する法的制限の撤廃が計画の6月から遅れる可能性も示した。

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