魅力より悲鳴があふれる文科省「#教師のバトン」 教員たちが訴えるのは

2021年5月16日 06時00分

文科省が3月にツイッターで始めた「#教師のバトン」には教員の悲鳴があふれる

 「出勤7時、退勤21時、休憩なし。もう限界です」―。全学年での少人数学級化が進む小学校で、教員の多忙が深刻だ。続く新型コロナウイルス対策や授業のデジタル化の準備などが重なり、文部科学省が教職の魅力を広めようとツイッターで始めた「#教師のバトン」プロジェクトは、皮肉にも現場の悲痛な書き込みであふれる。(土門哲雄)

「#教師のバトン」 学校現場の働き方改革の好事例などを会員制交流サイト(SNS)で発信してもらおうと、文科省が3月に開始。前向きな投稿で教職の魅力を伝える狙いがあったが、開始直後から過酷な勤務実態の訴えや改革を求める声が相次いでいる。

 「4月の超過勤務は100時間超。初めての学年を受け持つのに、教材研究に十分な時間が取れない」
 静岡県の小学校の30代男性教員が取材に嘆く。4月は入学式や始業式があり、校務の分担も変わる。授業のほか会議や書類作成、宿題やテストの丸付けに追われる。コロナ対策で放課後は教室の机やいすを消毒し、休んだ子どもには電話で健康状態などを確認する。
 「現場で削れる仕事はほんの一部。文科省が本気で動かないと、どうにもならない」と男性は訴える。
 デジタル化で昨年度中に、タブレット端末がほぼ全ての小学校で児童に1台ずつ配備された。東京都内のベテラン女性教員は「機器の準備が忙しさに拍車をかけている。扱いに慣れた人ばかりではない。セッティングやセキュリティーにみんな困っている」とこぼす。
 女性の学校では、仕事を抱えきれない新任教員が精神的な不調で出勤できず、他の教員が交代で授業をすることになった。「忙しすぎて話を聞いたり指導する余裕がなかった」
 都内の別の女性教員は「タイムカードをつけた後も遅くまで残業している。管理職は『早く帰ろう』と言うけど、帰れるわけがない」と訴える。教職員給与特別措置法で残業代は一律4%とされ、長時間勤務の歯止めになっていない。
 産休育休の代替教員探しにも苦心。江東区の元小学校職員本間たつやさん(64)が3月まで勤めた学校では昨年度、5人が産休育休で抜け、うち1人の代わりが見つからず副校長や他の教員で穴埋めしたという。

◆教員採用倍率は低迷 35人学級へ課題

 公立小学校の2020年度の教員採用倍率は、過去最低の2.7倍だった。今後5年で全学年で35人学級を実現するため、約1万3000人の教員が必要。教員志望者が減る中で質の高い人材をどう確保するのか。文科省は免許更新制を見直す他、有効期限が切れた人の復職を促したり、外部人材を活用したりする方針。
 慶応大の佐久間亜紀教授(教育学)は「教員不足は教員の世代交代や特別支援学級の増加などに加え、教員養成数を削減し、雇用形態の非正規化を進めてきた国の政策によって引き起こされた面もある」と指摘。「学生たちが安心して教職に就けるよう、労働環境や待遇面の改善で魅力を高め、志願者を増やしていく必要がある」と話す。

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