<くるみのおうち>(8)迫り来る課題 支援遠く、苦しむ日々 制度あれども…福祉の現実痛感

2021年5月16日 07時14分

父と週2回、卓球の練習をした中学時代の直樹さん=幸区で(太田修嗣さん提供)

 中学校の特別支援学級に進学した直樹がある日、神妙な面持ちで「ちょっと聞いてほしいことがある」と切り出してきました。「卓球部に入ってみたいんだ」
 実は、基礎体力の問題や顧問の先生が少なく、フォローがしづらいという事情で、入部を一度断念していたのです。けれども、本人は気合十分。ボールの打ち返しができるようになる、試合に負けてもイライラしない−の二点をクリアできたら、「仮入部の可否を判断します」と学校側に言われました。
 それから父子で週二回、練習のため近くの体育館へ。運動嫌いだったはずの息子が必死に練習を繰り返しました。カコン、カコン…。「よっしゃ!」とガッツポーズの息子。こうして頑張る息子をサポートできることに幸せを感じる一方で、私自身は疲労で体調を崩すこともありました。
 その後、何とか仮入部を果たしました。しかし、練習は厳しく、雰囲気になじむこともできず三カ月で退部することに。「部活がもっと緩やかだったら」「そもそも仮入部するのに、なぜ条件を付けられないといけないのか」といったモヤモヤが心に残りました。
 特別支援学校の高等部に進学すると、行動範囲が飛躍的に広がり、登下校などは独りで行動できるようになりました。その半面、携帯電話のカメラでバス車内の料金表示を撮影するなど、迷惑行為とみられがちな行動が増えていきました。
 そうした行動を回避するには、付き添いが必要。しかし、私は日中仕事があり、それができません。息子に注意することが増え、「なんでやめられないの」と問う私に対し、「だって、しょうがないじゃないか」と涙ながらに訴える息子にハッとさせられました。
 この子は、やっちゃいけないことだと分かっている。でも、気づいたら衝動的に動いてしまっていて、自分でもどうしようもない。「一番苦しんでいるのは本人なのかもしれない」と思いました。
 こうした困難に直面するたび、福祉制度を利用することができないか調べました。しかし通所支援・移動支援といった制度はあれど、ヘルパーさんが圧倒的に不足しており、わが家は利用できませんでした。
 相談支援機関も土日は開所しておらず、平日に会社を休んで出向くしかありませんでした。そこで苦しい状況を説明したものの、緊急性が低いとみなされたのか、その後の実質的な支援にはつながりませんでした。 (太田修嗣・NPO法人「くるみ−来未」理事長)
 ◇次回は23日に掲載予定
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