渡辺省亭の掛け軸 大出さん、市に寄付 「長く大切に保存を」

2021年5月16日 07時19分

大出晃一郎さん

 東京芸術大学大学美術館で企画展が開かれるなど注目度が急上昇している日本画家、渡辺省亭(せいてい)(1852〜1918年)の名作掛け軸「茨(いばら)に赤蛙(あかがえる)」を、栃木市嘉右衛門町で老舗洋品店を営む大出(おおで)晃一郎さん(83)が市に寄付した。栃木市立美術館の杉村浩哉館長は「色の重ね方が西洋水彩画の影響を受けた省亭らしい」と作品を高く評価している。 (梅村武史)
 省亭は洋風表現を取り入れた繊細で洒脱(しゃだつ)な花鳥画で知られる。一八七八年の万博を機にパリに渡り、ドガら印象派の画家たちと交流を重ねた。寄付作は縦百十七センチ×横四十八センチの絹本彩色で明治三十年代ごろの作品。デフォルメされたバラの葉と写実的なカエルの対比がユニークだ。
 大出さんは二十年ほど前、家の戸棚に長年しまい込まれていた作品を見つけた。五年前、都内の迎賓館赤坂離宮を訪れた際に装飾品の七宝額の原画が省亭作と知り、同じ省亭作として大切に保存してきた。
 省亭は晩年、中央画壇から離れて市井の画家を貫いたため、作品の多くは個人蔵。寄贈品もその一つで、東京・麻布の料亭で仲居をしていた大出さんの祖母が手に入れ、嫁入りの際に持参したという。
 東京芸大で三月から企画展「渡辺省亭−欧米を魅了した花鳥画−」(東京新聞など主催、現在は緊急事態宣言により臨時休館中)が開かれるなど、省亭は再評価が進んでいる。大出さんは「長く大切に保存してほしいとの気持ちから寄付することにした。多くの市民に見てほしい」と話す。作品は来年度開館する栃木市立美術館に展示される。

寄付された渡辺省亭の掛け軸「茨に赤蛙」(栃木市提供)


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