働く妊婦への「助成金」予算10分の1に減額 執行率2割、申請に応じぬ事業者も

2021年5月17日 06時00分
 新型コロナウイルスの感染拡大に不安を抱えながら働く妊娠中の女性が有給休暇を取りやすくするため、政府が2020年度に新設した事業者向けの助成金の予算が、21年度は10分の1に減額されたことが分かった。手続きの手間や人手不足などを理由に妊婦の求めに応じない事業者があり、制度の活用が進まないことが背景にある。コロナ禍で20年の出生数は87万2683人と過去最少に。深刻な少子化に対処するとして、菅義偉首相は「こども庁」創設に意欲を示す。だが、現場の施策では国民向けアピールとは矛盾した状況が起きている。(柚木まり)
 「新型コロナに関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金」は男女雇用機会均等法の母性健康管理措置に基づく。事業者は、妊娠中の従業員が医師などから「感染への不安」を理由に休業の指示を受けた場合、必要な措置を講じなければならない。
 妊婦は投薬治療が制限される。厚生労働省は妊婦から胎児へのコロナ感染はまれとする。しかし、米国では感染した妊婦は感染していない妊婦と比べて早産になりやすいという報告もあり、同省研究班が調査している。
 助成金は事業者に支払われる仕組み。妊婦本人が助成金を財源にした有休を取得するには、勤務先の事業者への申請が必要だ。

◆厚労省「予算規模を増やせず」

 20年度は90億円の予算を計上したが、事業者側の活用が進まず、支給決定額は約19億8800万円(5月7日時点)、執行率は2割程度。21年度は妊婦1人当たりの助成額を下げるなど10分の1の9億8000万円に減額された。
 厚労省雇用機会均等課は「20年度はコロナ感染状況を想定しづらかった。事業者に届けることを優先して多めに予算を計上した」と強調。予算減額の理由は「申請実績を見る中で、予算規模を増やせる状況にはなかった」と説明する。
 現状では、妊婦が有休取得を希望しても、制度導入の手続きに掛かる手間などを理由に事業者が応じない事例が、全国の労働局に報告されている。コロナの感染拡大が長引く中、妊婦は感染の不安を抱えたまま勤務したり、無給で休暇を取っている状況だ。
 厚労省は事業者が応じなかった場合には、労働局が直接、支援助成金の利用を働き掛けているとし、妊婦への支援を軽視しているわけではないとする。
 新型コロナ関連では、子どもが学校を休む際に働く親が休みを取りやすくする「小学校休業等対応助成金」でも、事業者への申請が「壁」となって利用が進まないことが問題となった。

◆妊婦「個人申請を認めて」

 新型コロナ感染を心配する妊婦が仕事を休みやすくする目的で、政府が創設した助成金制度が十分に活用されていない実態が浮かび上がった。事業者側に助成金の利用を強く求めることが難しく、我慢を強いられた女性たちは事業者を通さず、個人での申請を認める制度改正を求めている。
 兵庫県の女性会社員(27)は政府が助成金を創設した昨年6月、勤務先の上司に助成金を財源とした有給休暇の取得を求めた。だが、会社側は「この助成金制度は妊娠中の社員に配慮ができていない会社が使うものだ。わが社は該当しない」と主張。在宅勤務も認められず、産休までの約2カ月間を無給で休んだ。
 この女性は「会社とやりとりをする時点で、産休・育休を控えた妊婦は立場が弱い。解雇も避けたいし、個人での申請を認めてほしい」と訴える。
 東京都の女性会社員(36)も上司に助成制度を説明して有休取得を求めたが、「親会社で導入していないので、子会社では対応できない」と断られた。
 制度改善を求める署名活動をした大阪府の女性会社員(41)は「制度を必要とする人が少なかったわけではなく、申請を勤務先から断られた妊婦が多かった。国が個人申請を認めるなどの改善策を講じないために、申請件数が少ないままだ」と怒りを込める。
 厚生労働省雇用機会均等課は「事業者側に有給休暇の制度導入を促すための助成制度で、従業員の給料を補助する仕組みではないため個人申請化は検討していない」と説明している。

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