「白人側」と思われてきたアジア系 マイノリティー間でねたみ、確執に

2021年5月17日 06時00分
◇遠い融和 狙われるアジア系(中)

昨年5月25日、米ミネアポリスでジョージ・フロイドさんを拘束しようとする警官ら。左端で立っているのがタオ被告=CourtTV提供、AP・共同

 アジア系は勤勉で従順なマイノリティー(人種的少数派)の模範生―。白人社会は往々にしてアジア系にステレオタイプの理想像を押しつけてきた。黒人らが差別撤廃で声を上げても、「アジア系は文句も言わずに成功を収めている」などと、現状を正当化するために都合よく引き合いに出されることが多かった。

◆白人社会に押しつけられた模範神話

ヘビン・イムさん=ロサンゼルスで、岩田仲弘撮影

 「新型コロナウイルスの感染拡大で、模範神話がまかり通り、アジア系の被害が見過ごされている」。1970年代に韓国から移住し、西部ロサンゼルスで韓国系の生活向上に取り組むNPO「FACE」会長のヘビン・イムさん(55)は懸念する。「例えばロサンゼルスで(感染が拡大し始めた)昨年5月に死亡率が最も高かったのはアジア系だ。今年1月にはニューヨーク州でアジア系の失業増加率が最も高かったが、いずれも問題視されなかった」
 4月、ホワイトハウスのワクチン普及に関するオンラインイベントに地域指導者の1人として招かれたイムさんは、カマラ・ハリス副大統領に「アジア系がコロナ禍で不均衡な被害を受けている実態を見過ごさないでほしい」と訴えた。
 イムさんは、模範神話が白人の側に立って成功するアジア系というイメージを与え「黒人ら他のマイノリティーから恨み、ねたみを買っている」とも指摘する。

トウ・タオ被告=ヘネピン郡保安官事務所提供、AP

◆フロイドさん事件の警官の1人にアジア系

 中西部ミネソタ州ミネアポリスで昨年5月、黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を膝で押さえ付けられ死亡した事件は、アジア系社会に衝撃を与えた。傍らで暴行を止めず、周辺ににらみを利かせていた警官がモン(東南アジア山岳少数民族)系だったからだ。のちに第2級殺人ほう助罪などで起訴されたトウ・タオ被告(35)の姿は「白人社会で必死に生き残ろうとするアジア系」の印象を残した。
 「私たちは落胆し、悲しみ、引き裂かれた」。ミネソタ州でモン系の生活向上を図るNPO「HAP」の幹部マイ・モーアさん(44)は、白人による抑圧行為に仲間が加担する構図に肩を落とした。

マイ・モーアさん=本人提供

◆マイノリティー間で支援のパイを分け合う

 モン族はベトナム戦争で米国の反共破壊工作部隊として戦い、1975年のラオス陥落後、その多くが米国に渡った。ミネアポリス周辺の難民コミュニティーは世界最大規模だ。しかし、今なお住宅、雇用、教育、健康など生活格差に直面し、コロナ禍で生活はさらに悪化している。モーアさんは「支援が行き届いていない。アジア系には必要ないという模範神話が壁となっている」と訴える。
 モーアさんは「警官や地方議員など地域の指導者になることは、コミュニティーの発言力を高めることにつながり、尊敬される」とも語る。マイノリティー間で支援のパイを分け合うことを余儀なくされる中、モン系警官の取った行動はコミュニティーの期待を裏切っただけでなく、人種間の確執を一層深めた。(前アメリカ総局・岩田仲弘)

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