世界にはばたくシブヤフォント 障害者×専門学校生デザイン

2021年5月17日 07時06分

シブヤフォントの商品展開について話すフクフクプラスの高橋圭さん

 手書きの味わいのある、柔らかな曲線でできた文字。それが「シブヤフォント」。渋谷区の福祉施設や専門学校が一緒に作った書体が多くの企業にデザインとして使われ、多様な製品を生み出している。2017年に生まれてから続々と書体の種類は増え、現在39。3種類は米グーグル社が提供するウェブ用フォントサービス「グーグルフォント」にも採用が決まり、世界へと広がろうとしている。
 シブヤフォントの誕生は、一六年に始動した多様性をうたう渋谷らしい土産品づくりのプロジェクトがきっかけ。区内の複数の知的・精神障害者らの施設の利用者と、区内の専門学校、桑沢デザイン研究所の学生たちが交流しながらアイデアを考えるうち、利用者が書いた文字のデザイン性に学生が目を付けた。
 福祉作業所ふれんどの古戸勉施設長は「当時の会議は、横文字とデザイン用語が多くて、知らない人間からすると非常に疲れて。会議後は、今日何が話されたかを飲みながら確認し、それが結果的に施設間のつながりを生んだ」と振り返る。利用者の文字をもとに学生らが作品として整え、一七年、初めての書体が完成。文字だけではなく、文字の特徴である柔らかさ、優しさを取り入れたグラフィックアートも「シブヤフォント」と呼び、エコバッグや折りたたみ傘、タンブラーなどのデザインに採用されている。

トートバッグ、ジャケット、タンブラーや手ぬぐいなどの雑貨にもシブヤフォント

 学生たちは定期的にそれぞれの担当する施設に通い、行事に参加するなど交流は深まった。現在、書体は個人利用なら無料でウェブサイトからダウンロードし、使うことができる。英数字が主だが、書体によってはひらがなや記号もある。
 シブヤフォントのプロジェクトは、障害者のアートの貸し出しなどを手掛ける株式会社フクフクプラス(世田谷区)が渋谷区からの業務委託で行っていたが、今年四月からは新設の一般社団法人シブヤフォントが業務を引き継いだ。古戸さんと、フクフクプラス共同代表の磯村歩さんが共同代表を務め、総勢百人以上いる著作権者に代わり企業との契約の窓口となる。
 企業でデザインの仕事もしていた磯村さんは「学生はボランティアで関わるが、社会人としての学びがある。福祉施設、企業、事務局とみんなで応援し育てていく」と、デザイナーの卵を養成する場にもなっていると話す。シブヤフォントを採用する企業は現在三十を超える。夏ごろには区内に製品を紹介する常設店舗も開く予定だ。
 製品は各企業のネットショップや一部店舗のほか、渋谷スクランブルスクエアの展望施設「渋谷スカイ」の土産物店でも販売中(緊急事態宣言により休館中)。売り上げの一部は福祉施設の工賃にもなる。
 フクフクプラス共同代表で、一般社団法人シブヤフォントの営業統括も務める高橋圭さんは「福祉の現場に光が当たり、取り組みがかっこいいと思ってもらえるようになればうれしい」と話す。
 二十三日〜三十一日の午前十一時〜午後五時、シブヤフォントを使った製品の展示会が宮下公園近くの渋谷キャスト多目的スペースである。入場無料。新型コロナウイルス対策で入場者は名簿に記入が必要。
 文・神谷円香/写真・木口慎子
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