<ひと物語>探究心から新発見 カブトムシ観察の小学生・柴田亮さん

2021年5月17日 07時14分

カブトムシの研究成果が学術誌に掲載された柴田さん=いずれも杉戸町で

 昆虫少年の探究心が世界に通じた。杉戸町の柴田亮さん(12)はカブトムシが大好きな小学生。夏休みの自由研究で「日本のカブトムシは夜行性」との定説を覆し、その成果が米国の生態学専門誌「エコロジー」に掲載された。「うれしいよりびっくり」。素直に語る表情はあどけない。
 「角の形が芸術的」と評するカブトムシとの出合いは幼稚園児のころ。訪れたさいたま市内のキャンプ場で採集を試みたが、一匹も捕まえられなかった。落胆して帰宅すると、自宅近くのクヌギの木にたくさんいるのを見つけた。
 自宅の庭でも探すようになり、異変が起きたのが二〇一九年の夏。東南アジア原産のシマトネリコの木に、日中からカブトムシが集まっていた。「夜行性のはずなのに、なぜだろう」。疑問が浮かび、時間帯ごとに個体数を毎日数えて記録することにした。
 その結果、午前零時ごろが最も数が多いが、夜が明けても多くのカブトムシが採餌や交尾をしていた。正午になってもピーク時の半数ほどが確認できた。
 深まる謎を解くため、図書館で借りた本にヒントがあった。山口大理学部の小島渉講師が書いた「私のカブトムシ研究」が、昼間にシマトネリコに集まる可能性に触れていた。すぐに小島さんに連絡を取ると、個体を識別するようアドバイスされた。
 迎えた調査二年目の夏。飛来した百六十二匹の背中や足にアクリル絵の具で印をつけ、毎日三〜五回のカウントを続けた。「夜は暗くて印をつけるのが大変だった」。深夜や早朝は両親の助けを借り、「家族みんなで楽しみながらの観察でした」と母の真理子さん。
 積み上げたデータから各個体の活動パターンが把握でき、二十四時間以上とどまるカブトムシがいることも分かった。報告を受けた小島さんも舌を巻き、新たな発見を世界に発信しようと共同で論文に仕上げた。
 この研究は、シマトネリコにだけ日中にも集まり、活動する理由までは解明できていない。「樹液を飲むのに時間がかかったり、樹液に中毒性があったりするのかも」。柴田さんはこんな仮説を立て、いずれは樹液成分の分析や小型発信器を使った個体の追跡もしてみたいと張り切る。

日中にシマトネリコに集まるカブトムシ。柴田さんは個体の識別用に青い印をつけた(山口大提供)

 「カブトムシの観察は生活の中に溶け込んでいて全く飽きなかった。毎日近くで見ていると、もっと愛らしく感じるようになった」。この夏ももちろん調査を続けるつもりで、「早く飛んでこないかなと毎日待っている」。期待を膨らませながら、庭木を眺めるこのごろだ。 (近藤統義)
<しばた・りょう> 杉戸町生まれ。町立杉戸第三小学校の6年生。今回の観察で印象深かったのは「シマトネリコに初めて放した1匹がガリガリと木を削っていて、削り方が分かるんだと感動したこと」。真理子さんによると、興味を持つと納得するまで熱中する性格という。好きな教科は理科。自宅でカブトムシの幼虫も育てている。

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