2度の自殺未遂乗り越え…身体障害者として初の宇宙飛行へ「夢を持てば、かなえるための力が湧いてくる」

2021年5月17日 12時00分
 身体障害者として初の宇宙飛行を目指す冒険家がフランスにいる。事故で四肢を失いながらも「夢を持てば、かなえるための力が湧いてくる」のモットーで、英仏間の英仏海峡を泳いで横断するなど数々の挑戦に成功してきたフィリップ・クロワゾンさん(53)だ。自身の経験を生かそうと障害児アスリートの育成にも力を入れており、今夏に予定される東京パラリンピックにも熱い視線を送る。 (仏西部アングランで、谷悠己)

5月中旬、フランス西部アングランの自宅で「夢を持てば不可能なことはない」と語るフィリップ・クロワゾンさん=谷悠己撮影

 「私を宇宙へ連れていって」。クロワゾンさんは昨年11月、宇宙船プロジェクトを進める米電気自動車大手テスラの創業者、イーロン・マスク氏のツイッターに、経歴付きのメッセージを送った。4年前に自動車のダカール・ラリーを完走し、「次の目標は宇宙」と決めていたという。
 5000万人超のフォロワーがいるマスク氏から「返事は来ないと思った」が、反応は早かった。「いつかあなたを宇宙船に乗せる」とのメッセージが届き、クロワゾンさんが9月に訪米し、実現の可能性を打ち合わせる予定を取り付けた。
 自身を「ミスター・ポジティブ」と評するクロワゾンさんだが絶望の日々はあった。自宅のアンテナ修理中に感電して手足を切断、その後妻子と別れたことで2度自殺を試みた。
 それでも「孤独の中でも助けてくれる人が必ず現れる。その時にはためらわずに助けを求めるべきなのだと気付いてから、強くなれた」と話す。

2010年9月、英仏海峡を泳ぐフィリップ・クロワゾンさん(本人提供)

 新たに出会ったパートナーの支えもあり、切断手術後のリハビリ中に夢見た英仏海峡横断泳に42歳で成功。「健常者だった時も泳ぎは不得意だったので、努力すれば不可能なことはないと分かった」。以来、数々の挑戦を続けている。
 宇宙飛行に向けて「肉体的な不安はないが、1番の問題は英語」と笑うクロワゾンさん。大西洋に面した仏西部アングランの自宅前で泳ぐほか、毎日3時間の英語学習に取り組む。

クロワゾンさん(前列㊥)とパラリンピック出場を目指す障害児アカデミーの受講者ら=クロワゾンさん提供

 3年前には、パラリンピック出場を夢見る障害児の養成アカデミーを創設した。東京大会への出場が有力視される競泳選手も出ており、「自分のこと以上にうれしい」と喜ぶ。
 東京大会に対しては、自身もイベントに関わったことがあるというトヨタ自動車を例に「障害者を支える技術開発が盛んな国なので、障害に対する世間の目を一変させる革新的な大会になるはずだ」と期待する。新型コロナウイルスの状況次第ではテレビ局のパラリンピック解説者として来日する可能性もあるといい、「覚えた英語で日本での講演会を実現できたら、宇宙飛行に向けて大きな一歩になりそうだ」と笑った。

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