<牛久入管で何が…長期収容される外国人> (5)「五輪のための」厳格化

2020年5月9日 02時00分

「五輪のために収容されている」と訴える収容者の絵(「牛久入管収容所問題を考える会」提供)

 「東京五輪・パラリンピックの年までに、安全安心な社会の実現のため、不法滞在者ら社会に不安を与える外国人を大幅に縮減することは、喫緊の課題」
 二〇一六年四月、入国管理局(現・出入国在留管理庁)に局長名の内部通達が回った。非正規滞在の外国人の「効果的な排除」を求める内容だった。
 一八年二月の通達には、非正規滞在で送還対象の外国人について、事実上無期限の収容の容認が明記された。仮放免が認められない場合、「送還の見込みが立たない者」であっても「原則、送還が可能となるまで収容を継続」と指示した。
 収容期限は、欧州連合(EU)では原則六カ月、米国は原則九十日で、上限が設定されている。入管も一〇年の通達では、六カ月を超えると仮放免の検討を求めていた。
 「五輪のため長期収容が常態化した」との見方は、支援者の間で根強い。
 複数の法務省関係者は「五輪に向け、ものすごく治安を気にしているのは事実」と口をそろえる。「『治安向上に取り組んでいます』というアピールだ」と指摘する入管関係者もいる。

■有罪判決

 入管庁は一九年十月、ナイジェリア人長期収容者の餓死の調査結果を公表する際、「送還を拒む収容者の実態」と題する資料も発表した。「四割は過去に有罪判決を受けている」との内容で、長期収容を正当化する目的が透ける。
 入管庁によると一九年末現在、送還を拒む収容者は六百四十九人。このうち42%の二百七十二人は、過去に入管法違反以外で有罪判決を受けた。10%の六十六人は、仮放免中の行為の有罪判決という。
 入管OBは「半分以下の四割を根拠にするとは…。残り六割をどう説明するのか。治安には影響しない収容者も多く、同一には語れないのに」と語る。
 実際、新型コロナウイルス感染拡大の防止策で、東日本入国管理センター(牛久市)は今年四月、四十人程度を仮放免している。
 有罪判決を受けた人についても、支援団体や弁護士からは「服役や罰金などで刑罰は既に終え、自由なはず。長期収容の理由にならない」との批判が上がる。
 法令違反の内容の内訳では、薬物関連が30%で最も多いが、二位は17%の交通関連だ。

■見直し

 在留資格や仮放免を認めないなど、対応を厳格化した結果、長期収容問題が生じ、餓死や自殺、大量ハンストも起きた。複数の入管関係者は「表には出ないが、送還を拒む人と同等かそれ以上に大変な境遇なのに、あきらめて帰国した人たちもいる」と話す。
 国内外の批判を受け、入管は一九年十月、収容や送還について議論する有識者会議を設置した。提言の骨子案が発表され、今月末にも意見がまとめられる。
 入管OBの木下洋一さん(55)は「単に厳格化すればいいという発想は短絡的。一時的に効果があっても持続性には疑問がある」と指摘し、こう提言する。
 「多くの外国人や日本人家族の人生を左右するのに、外部のチェックが一切なく、入管の裁量権がブラックボックス化しているのが最大の問題点。収容や仮放免の運用を根本から見直し、第三者機関が手続きに関与するシステムが不可欠だ」=おわり

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