<牛久入管で何が…長期収容される外国人> (3)医療届かず 放置で死亡

2020年5月6日 02時00分

2014年3月29日に記録された、男性が亡くなる直前の東日本入国管理センターの監視カメラ映像(遺族側弁護団提供、画像の一部を加工しています)

 ベッドから落ち、もがく男性。「アイム・ダイイング(死にそうだ)」「水、お水」と繰り返す訴え。二〇一九年五月、水戸地裁の法廷で映像がモニターに流れると、裁判官らが息をのむように見入った。
 映像は、入国管理局(現・出入国在留管理庁)の東日本入国管理センター(牛久市)で一四年、カメルーン人男性=当時(43)=が亡くなる直前の様子。三月二十九日夜から翌朝までの監視カメラの映像を約一時間四十分に編集し、遺族が国に損害賠償を求めた訴訟で再生された。
 男性はベッドから落ち、車いすに乗せられても、ずり落ちる。床で横になったまま、苦しそうに何度も寝返りを打つ。動きは徐々に小さくなり、午前一時台には、ほとんど動かなくなった。入管職員が救急要請をしたのは午前七時ごろ。間もなく心肺停止が確認された。
 訴状などによると、男性は成田空港で入国を拒否され、一三年十一月にセンターに収容された。糖尿病などを患い、一四年三月十六日に体調悪化で受診を求めた。十一日後にセンターの非常勤医師が診察し、監視カメラ付きの休養室に移された。その三日後に亡くなるまで、外部の病院には搬送されなかった。
 遺族側の弁護士は、男性の無念さを訴える。「母国に家族を残し、日本の冷たい床で一人で死ぬのは、どんな気持ちだっただろう」

■不十分

 入管は一四年十一月、男性の死亡について「医療態勢が不十分だった」との調査報告を公表した。
 センターによると現在、看護師一人が常駐し、非常勤医が交代で平日午後に診察する。精神科医や歯科医師も毎月、往診する。
 報告書では改善点として、常勤医の確保と、時間外に医師に相談できる態勢を挙げた。しかし、「なかなか引き受けてくれる人が見つからない」という。
 収容者は「症状を訴えても、診察まで何日も待たされる」と口をそろえる。センターは「医師が診察できる数には限りがある」と説明する。
 診察以外に週一回の心理カウンセリングもあるが、イラン人収容者は「いろいろ訴えたら、『カルシウムが足らないんじゃないかしら』と言われた。びっくりした。もう受けるのをやめた」と怒る。

■訴訟

 訴訟に発展したケースは他にもある。一九年十一月、がんの悪化を放置されたなどとして、精巣を摘出したクルド人男性の収容者が国に慰謝料を求めて提訴した。
 訴状によると、センターに収容中の五月、睾丸(こうがん)の痛みを訴えた。非常勤医師の診察で「外部の病院に行かせる」と言われたが、実現しなかった。ハンストをして約四カ月後に仮放免。外部の医師の診察を受け、緊急手術でがんが判明したという。
 ボランティアで収容者の医療相談をしている医師の山村淳平さん(65)は「入管職員が医療の判断をしているのが一番問題で、とても危険」と指摘。「治療する気はなく、送還可能な状態ならいいと考えているのだろう。積極的に外部で診療させるべきだ」と批判している。

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