<牛久入管で何が…長期収容される外国人> (1)自傷、精神病む人 続出

2020年5月3日 02時00分

イラン人収容者が内部の様子を訴えようと昨年、ハンストで倒れた人を描いた絵=「牛久入管収容所問題を考える会」提供

 クルド人のフセインさん(25)は衝動的に、シャンプーを一気に飲んだ。二〇一八年五月、入国管理局(現・出入国在留管理庁)の東日本入国管理センター(牛久市)。期限のない収容に絶望し「死のう」と考えたが、搬送されて未遂に終わった。
 トルコから来日したのは十代。同胞のクルド人組織と戦う軍への入隊を避けるためだった。難民申請は認められなかったが、仮放免された。一七年に日本人女性と結婚。「家族ができたから」と、就労資格がないまま解体現場で働き、仮放免を取り消された。
 結婚の約一週間後の一七年四月に収容。兵役の問題や家族の存在を理由に、送還を拒否している。
 他の収容者と相部屋で、プライバシーはない。約六時間の「自由時間」に各部屋などを行き来できるが、それ以外の時間は施錠される。面会はアクリル板越しで一回三十分。インターネットは使えず、メールのやりとりもできない。
 テレビを見て、音楽を聴く以外、ほぼ何もしない収容生活は三年に及ぶ。「将来が不安。家族と離れ離れが一番つらい」と語る。気力を失いそうな時は、妻や義母に電話をかける。
 昨秋にハンストで体調を崩し、二週間だけ仮放免。妻と小学生の娘を東京ディズニーランドや海に連れて行った。「こうやって娘のしたいことをしてあげられる生活をしたい」と願う。
 四月下旬、新型コロナウイルス対策で一カ月の仮放免が決まっても「当分は休みたい。先のことは分からない」と言葉少なだった。

■ハンスト

 センターの収容人数は通常二百~三百人。入管は一六年ごろから、在留資格延長や仮放免を認めないなど、対応を厳格化した。母国での処罰の恐れや、日本に残る家族などを理由に、送還を拒む人は多い。帰国に非協力的な国もある。このため、二年や三年を超える長期収容者が急増した。
 一八年にインド人収容者が自殺し、三人が直後に自殺未遂をした。抗議のハンストが広まり、一九年夏には百人規模に拡大した。何人も倒れ、体を壊して二週間だけ仮放免される人が続出した。
 支援団体によると、今はハンストは数人だけ。しかし、精神を病んで仮放免になる人が目立つという。
 長期収容者の大半が不眠で睡眠誘導剤を服用。抗うつ剤や精神安定剤を飲む人も多い。自殺未遂や自傷行為が後を絶たず、精神を病んで排せつ物を壁に塗りたくる人も。収容者は「ここは地獄だ」と訴える。
 別の収容施設では一九年六月、三年以上収容されていたナイジェリア人男性が餓死した。入管はハンストの結果と発表したが、面会していた柚之原寛史牧師は「抗議する性格ではなく、心が折れて食事ができなくなったのでは。無期限で何年も収容されれば、誰だっておかしくなる」と話す。

長期収容が問題化している東日本入国管理センター=牛久市で、本社ヘリ「あさづる」から

■帰れない

 長期収容について、入管は「送還を拒む収容者が増えた」とする。しかし、面会活動を二十六年続ける「牛久入管収容所問題を考える会」の田中喜美子代表(67)は「帰らないのではなく『帰れない』。そうでなければ自殺や餓死の前に帰国するはずだ」と指摘する。
 収容者を支援する児玉晃一弁護士も批判する。「収容は本来、送還の準備。入管が悪用し、自殺を図ったり精神を病むほどまで、わざと追い詰めている」
     ◇
 収容の拠点施設の東日本入国管理センターでは、長期収容が常態化し、死者も出ている。批判を受け、入管の有識者会議で対策が検討される中、実態や課題を検証する。(この連載は宮本隆康が担当します)
<非正規滞在外国人の収容> 滞在期限を過ぎたオーバーステイや、就労ビザを持たない労働などで、退去強制令書を出された外国人は、送還まで入管の収容施設に拘束される。体調、家族の状況、逃亡の可能性などを考慮し、制限付きで一般社会での生活を認める仮放免の制度もある。

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