障害者認定ない難病の人の就労 支援厚い「枠」に入れず 「手帳」制度化求める声も

2021年5月19日 07時22分
 難病でありながらも、職場で通院などへの配慮があれば、ほぼ支障なく働ける人は少なくない。一方で、障害者手帳がもらえないことで、支援の手厚い「障害者雇用枠」で働くことができず、就労を諦める人もいる。支援者からは「難病の人が働きやすくなる手だてが必要」との声が上がる。23日は2014年の難病法制定を記念した「難病の日」-。 (佐橋大)
 東海地方の四十代女性は保育士として働いていた数年前から、激しい疲労感に襲われるようになった。体調の波があり、食事が取れないことも。次第に頬がこけていった。
 後に分かったその原因は下垂体前葉機能低下症。頭の中にある下垂体から出るホルモンの量が減る病気で、国が難病法に基づき医療費助成をしている三百三十三種の難病の一つだ。
 ホルモンを補う薬を飲んだが、症状は悪化。ひどいときは立って歩くのもつらかった。一日の勤務時間を四時間、三時間と短くするなど、勤務先も配慮してくれたが、体力的にきつくなり、昨年夏に退職した。
 女性は今、体に負担のない範囲で働ける再就職先を探している。ただ、ごく短時間の軽作業で、体調の悪いときはいつでも休めるような仕事は、ほとんどが障害者雇用枠。一般枠とは採用基準が異なり、病気や障害を事前に会社に伝える仕組みで、非正規雇用で給与が低い場合が多い半面、必要な配慮を得られやすい。だが、応募するには障害者手帳が必要。女性は障害者ではないため対象外で、「難病患者も応募できるといいのに」と話す。
 医療費助成の対象となる難病患者は一八年度末で約九十一万人。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構がまとめた「難病のある人の雇用管理マニュアル」によると、治療を続けながら十分に働ける難病患者が多い一方、症状が重く日常生活にも支障がある人もいる。さらに、障害者手帳を取得できる人と、できない人にも分かれる。
 「明らかに一般雇用での就職は難しいほど状態が悪いのに、障害認定を受けられない人が相当数いた」。一九年まで六年間、神奈川県内のハローワークなどで難病患者の就労支援に携わった就労支援ネットワークONE代表の中金竜次さん(50)は振り返る。
 中金さんによると、症状の変動が大きい病気や、強い疲労感や痛みで行動が妨げられる病気は身体障害の基準に当てはまりにくい。障害者枠を使えずに就労を諦めて生活保護を受ける人や、無理して一般雇用で働き体調を悪化させた人も多く見てきたという。
 障害者雇用促進法は、難病患者についても企業に原則、障害者と同様の対応を求めている。難病というだけで不採用とすることなどを禁止し、働きにくさを解消する合理的配慮の提供を義務化。一般雇用の難病の人への配慮も義務づけられているが、障害者枠の方が配慮を実現しやすい。
 だが、中金さんは「現在の難病の人の就労支援の仕組みでは対応しきれていない部分がある」と指摘。そこを補う手段として「難病手帳」の制度化を提案している。一九年に任意団体の「難病手帳の制度化を考える会」を立ち上げ、難病の人を障害者雇用率の計算に含めることなども求めるインターネット上の署名活動を展開。「社会保障の枠組みから、こぼれ落ちている人の存在を知ってほしい」と訴える。

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