署名偽造容疑で田中孝博事務局長ら4人を逮捕、全容解明へ 愛知県知事リコール不正

2021年5月19日 14時38分

逮捕されたリコール活動団体事務局長の田中孝博容疑者

 愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動を巡る署名偽造事件で、愛知県警は19日、地方自治法違反(署名偽造)の疑いで、元愛知県議でリコール活動団体事務局長の田中孝博容疑者(59)ら男女4人を逮捕した。県警は田中容疑者が主導して事務局の一部が組織的に大量の署名を偽造したとみて全容解明を進める。
 ほかに逮捕されたのは田中容疑者の妻のパート従業員なおみ(58)、次男の塗装業雅人(28)、事務局幹部のアルバイト渡辺美智代(54)の3容疑者。逮捕容疑は、田中容疑者ら4人は共謀して昨年10月下旬ごろ、県外でアルバイトを動員し、県知事リコールの署名を偽造したとされる。県警は4人の認否を明らかにしていない。
 本紙の取材では田中容疑者が名古屋市の広告関連会社に依頼して、昨年10月20~31日の間、佐賀市内で署名偽造のためにアルバイトによる名簿の書き写し作業が行われていた疑いがある。
 田中容疑者は運動の実務の責任者を務め、渡辺容疑者は名簿管理や金庫番を担っていた。なおみ、雅人の両容疑者は頻繁に事務所に出入りし、街頭活動などを手伝っていた。
 田中容疑者は19日朝、滞在先の静岡県伊豆市で逮捕された。県警は愛知県内の田中容疑者の実家など関係先の家宅捜索を始めた。
 リコール活動団体は同年11月、約43万5000人分の署名を各選管に提出したが、83・2%に当たる36万2000人分が無効と判断された。同一の筆跡や指印が多数確認されたほか、故人の署名も含まれており、県選管は2月、被疑者不詳で県警に刑事告発した。その直後、本紙などの報道で署名偽造疑惑が発覚。アルバイトを雇った大規模な偽造は過去に例がなく、県選管が偽造防止策を踏まえた改善案を総務省に提出するなど制度のあり方も問われる事態となった。
 田中容疑者は当初、不正への関与を否定していたが、逮捕前の本紙の取材に広告関連会社に署名の書き写しを依頼したことは認めた。ただ、「違法性の認識はなかった」などと話していた。
 県警は選管に提出された全署名を押収するとともに、名古屋市東区のリコール活動団体の旧事務所を家宅捜索。アルバイト動員に関与した広告関連会社元社長や事務局幹部らから任意で事情を聴くなどして捜査を進めてきた。

◆「法律や制度の隙を突き、極めて悪質」

 明治大の牛山久仁彦教授(地方自治論)の話 今回の署名偽造は、法律や制度の隙を突いたもので極めて悪質だ。捜査で事件を明らかにすることは当然だが、リコール運動を主導した人たちは自らの潔白や無関係ばかりを主張するのではなく、何が起き、金銭の動きはどうだったのか徹底して真相を明らかにするべきだ。その説明を尽くさなければ、運動の趣旨自体も汚すことになりかねない。そもそもリコールなどの直接請求は住民のための政治参加の制度であり、善意を前提にして成り立っている。不正防止でルールを厳格化してしまうと住民が取り組みにくくなるため慎重に考えるべきだ。ただ悪質な事件が起きた以上、住民参加に配慮しつつ不正に歯止めをかける検討も必要になるだろう。

 愛知県知事のリコール運動 2019年の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」で、昭和天皇の肖像を使った創作物を燃やす映像作品や、慰安婦を表現した少女像が展示されたことに抗議し、美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長らが実行委員長だった大村秀章知事のリコール(解職請求)を主張。名古屋市の河村たかし市長も「応援団」として加わり、昨年8月から一部の市町を除いて10月まで署名集めを実施した。活動団体は約43万5000人分を県内の各選管に提出したが、解職の賛否を問う住民投票に必要な法定数約86万6000人分には届かなかった。

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