<さまよう避難計画 東海第二原発運転差し止め判決>(4)混乱必至 複合災害発生時どこへ

2021年5月20日 07時21分

「第二の避難先」にも言及した判決文

 日本原子力発電東海第二原発で深刻な事故が起きた際、原発の三十キロ圏内にある十四市町村の住民約九十四万人は、県内外の百三十一市町村に避難することになっている。
 だが、原発事故に加え、地震や台風、冬季の積雪などが重なる「複合災害」で、予定していた避難所が使えなかったり、向かうことすらできなかったりする場合も想定される。これに対応するため、県が考え出したのが、さらに広域で避難者の受け入れを要請する「第二の避難先」だ。
 東海第二の運転差し止めを命じた水戸地裁判決でも「(県は)複合災害時における第二の避難先の確保を今後の検討課題としている」と指摘していた。

■ひも付け

 県は判決に先立つ三月十二日、「第二の避難先」の候補地を公表。候補地となったのは「第一の避難先」に含まれる埼玉、千葉、栃木、群馬、福島(帰還困難区域を除く)に宮城を追加した計六県の全域。ただ、第一の避難先のように、避難元と避難先の自治体はあらかじめひも付けされていない。事故発生時の状況により、茨城と各県が調整し、避難先が決められる。
 県原子力安全対策課の担当者は「事前予測ができない複合災害に柔軟に対応するため」と説明する。そうしたメリットがある一方で、状況次第で避難先が変わるため、避難する住民に情報が速やかに行き届かなければ、大混乱が生じることは必至だ。
 その上、自家用車を持っていない人や、高齢者ら支援が必要な人の交通手段をどうするのかという課題は残されたままだ。
 受け入れる側も対応の難しさを感じている。ある県の担当者は「事故が起きてみないと、第一の避難先だけで収まりきるのかどうか分からず、避難所がどの程度必要になるかが見通せない」と頭を抱える。別の県の担当者も「『柔軟な対応をお願いします』ということだが、シミュレーションをするときりがない」と対応に苦慮する。

■密の恐れ

 第二だけではなく、第一でも共通の課題として、そもそも避難所の居住スペースが、県の定める「一人当たり二平方メートル」で妥当なのかが挙げられる。新型コロナウイルスの感染防止対策を考えれば、この間隔では密になる恐れが出てくる。
 国際的な災害支援の基準として知られる「スフィア基準」では、避難所の適切な居住スペースとして「一人当たり三・五平方メートル」を目安にする。この基準を適用すれば、さらに多くの避難所が必要になる。
 また、広範囲の大規模な災害時には、第二の避難先も受け入れられない可能性がある。その際は「さらに範囲を広げて受け入れを要請する」(県原子力安全対策課の担当者)ことになる。そうなれば、避難計画はもはや意味をなさない。
 原発の避難計画に詳しい東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は「九十四万人が第一の避難先だけで収まりきるとは思えず、はじめから第二の避難先の使用を考えなければならない」と指摘する。
 その上で、避難スペースの過大な算定などずさんな実態が明らかになったことを踏まえ「今のままでは、避難計画が『絵に描いた餅』にもならない。これまでに経験しなかったような最悪の事態も想定に含めなければ、計画は粗雑だと言われても仕方ない」と批判した。 =終わり

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