五輪固執の首相発言も一因 …「極めて低レベル」な防衛省システム 正しい番号でもワクチン予約できず

2021年5月21日 06時00分
岸防衛相=4月撮影

岸防衛相=4月撮影

 でたらめな数字列を入力しても予約ができてしまう欠陥が判明した防衛省大規模接種センターの予約システムに、今度は正しい番号を入力しても予約できない人がいることが明らかになった。なぜこんなことになってしまったのか。 (大平樹、石井紀代美)

◆防衛省の対応はそっけなく

 「番号が正しいかどうか、半角入力すべきところが全角入力になっていないかなど確認した。何回やっても画面に『入力された内容に誤りがあります』と出て、予約に進めない」。東京都板橋区に住む70代の男性は20日、「こちら特報部」の取材に、怒りに満ちた口調で語った。
 男性によると、接種券が区から届いた17日、自宅のパソコンで、接種券番号と板橋区の自治体コード、生年月日を入力した。それなのにエラーが出た。スマートフォンでも試したがダメ。板橋区に問い合わせ、区職員に入力してもらっても同様だった。
 実施主体の防衛省にも電話した。18日は電話が混み合ってつながらず、ようやくつながった翌19日、職員に事情を話すと「そういった例もある。システム改修を検討している」と言われただけだった。
 男性は20日時点でも大規模接種を予約できない。もうあきらめて、区の接種会場で受けようと思っている。「自分の入力間違いだろうと思って悩んでいる人は他にもいるはずだ。起きてしまったことは仕方ないとしても、防衛省はこういうトラブルが発生していることを早く知らせるべきだ」と憤る。

◆「受注側も発注の防衛省も問題」

 正しい番号を入力したのに予約できないのは、この男性に限った話ではない。大規模接種センターの予約ができないとの問い合わせが数十件寄せられた板橋区保健所の国枝豊担当課長は「防衛省のシステムなので、何が起きているのかは分からない。同省には情報提供している」と戸惑い気味に話した。同様の相談が数件あった目黒区新型コロナ予防接種課の担当者は「職員は防衛省に連絡したものの、『調べてみます』と言われたきり返事がないようだ」と話した。
 ITに詳しい立命館大の上原哲太郎教授(情報セキュリティー)は、予約システムのトラブルについて「基本的な論理構成に問題があった。一部は改修されたようだが、極めてレベルが低いミスだ。受注側はトラブルが起きることに気が付けなかったのだろうか。発注した防衛省も要件を細かく定めなかったかもしれず、問題だ」と指摘した。
 「悪意を持ったうその予約を多少許してでも、正常な予約は必ず受け付けるようにするべきだ。会場での受け付けをスムーズにするため、予約完了時に予約番号を発行することも有効だろう」と提案した。

◆準備期間わずか20日間

 いずれにせよ、安全保障を担う組織とは思えない体たらくだが、政治ジャーナリストの泉宏氏は、菅義偉首相が4月23日に「7月末までに高齢者へのワクチン接種完了を目指す」と発言したのが、一連の問題の発端とみる。
 首相が防衛省に指示を出したのは4月27日。翌28日から同省は大規模接種センターの設営を開始している。予約サイトで受け付けを始めた5月17日まで、20日間しかなかったことになる。
 泉氏は「菅氏の発言の根底にあるのは、もちろん7月23日開幕予定の東京五輪。自治体任せの接種では間に合わないため、起爆剤として目を付けたのが大規模接種だった。急きょやれと言ってやらせられるのは自衛隊しかいないのは分かるが、もっと早く準備するべきだった。見通しが甘すぎる」と語った。

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