無人駅の車椅子対応 ブログで問題提起 社会に無自覚な差別

2021年5月22日 07時11分

オンライン取材に、「障害者はペコペコしなければいけないのでしょうか」と疑問をぶつけた松浦明美さん

 電動車椅子を使う川崎市在住のコラムニスト伊是名夏子(いぜななつこ)さん(39)が先月、JR東日本に無人駅での移動介助をいったん断られた経緯をブログで問題提起をしたところ、激しいバッシングを浴びた。市内の障害者たちは、声を上げた当事者を「クレーマー」となじる背景に、無自覚な障害者差別があると指摘する。 (山本哲正)
 「階段しかない無人駅は本当に困ります。高齢者にとっても大変でしょう」と伊是名さんに共感したのは、脳性まひによる肢体不自由で車椅子で生活している多摩区の松浦明美さん(61)。自らも路線バス乗車時に運転手にシートベルトを強く装着され肋骨(ろっこつ)を折る交通トラブルを経験している。
 障害者差別解消法(二〇一六年施行)は、障害者ではない人と等しく尊厳を重んじられる権利を明記。バリアフリーの合理的配慮を民間事業者の努力義務としており、さらに義務化する改正案も国会で審議中だ。だが、松浦さんは今回の問題で社会の理解が進んでいないと痛感した。
 ツイッターでは「もっと早く介助依頼をすべきだ」など、伊是名さんへの非難が相次いだが、松浦さんは「障害者はペコペコしなければいけませんか?」と嘆く。「自分で選んで、障害を持って生まれてきたわけではないのです。障害者が一歩下がって『電車に乗りたい』と事前連絡するとして、でも、もし急に子どもの迎えを求められたり、親が危篤といった場合、(車椅子を使わない)皆さんも一日我慢していられますか?」
 川崎市では脳性まひ者の団体「青い芝の会」が、車椅子の乗車拒否を繰り返した路線バスに抗議した「川崎バス闘争」(一九七七年)など、交通バリアフリーを求める闘いが繰り広げられてきた。

オンライン取材に、障害者のことを理解しづらい社会環境の問題を指摘した佐藤紀喜さん

 障害者の地域活動支援センター「GDPかわさき」(多摩区)も、誰もが市バスを安全に利用できるよう市に働き掛けている。「車椅子であろうとベビーカー、高齢者であろうと、です」と強調するのは、相談支援専門員で自らも車椅子を利用する佐藤紀喜さん(55)。「伊是名さんの、訴えていることは、私たちと同じと思いました」
 センターでも以前、市バスに改善を求めた際に、否定的な意見が多く寄せられたことがあった。
 障害者本人にも家族にも、周囲の人たちにも「障害者は世に出ていい存在ではなく、施しを受けて暮らしていく存在との考え方が脈々と受け継がれている」と、根深い差別を指摘する。
 二〇一六年に相模原市で起きた津久井やまゆり園事件では、植松聖死刑囚の差別思想に加え、裁判での匿名審理に「障害者が見えない存在にされている」との声も上がった。教育行政でも障害児を分けて教育する考え方が根強く、相互理解を滞らせている。「この国は、いまだに障害者のことを理解できない社会環境にある。否定的な意見を述べる人たちを責めて終わりという話ではないのです」

◆「乗車拒否」ブログをめぐるバッシング問題

 4月、静岡県熱海市の来宮(きのみや)神社へ1泊2日で出かけた伊是名さんは乗り換えのJR小田原駅で、最寄りの来宮駅は階段がある無人駅と伝えられ、降車時の介助を依頼。約1時間の交渉にも「案内できない」と断られた。だが、途中の熱海駅で駅員が同行し、結果的に介助を得られた。この経緯を「久々の乗車拒否にあった」とブログにつづり、「誰でも安心できる公共交通機関になってほしい」と問題提起すると、ツイッターなどで「事前に連絡をすべきだ」「駅員の業務を妨げている」など、伊是名さんへの激しいバッシングが起こった。

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