「被害はいつも市民」ゴミ散乱、水なし…空爆は終わったが復旧見通せないガザの現状

2021年5月22日 17時35分

18日、パレスチナ自治区ガザで、空爆から逃れるため国連運営の学校に避難してきた住民=UNRWA提供

 【カイロ=蜘手美鶴】イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム主義組織ハマスによる停戦合意を受け、ガザでは21日、空爆で打撃を受けたインフラなどの復旧作業が始まった。ただ、空爆の被害は甚大で、復旧の見通しが立たないのが実情だ。爆撃は収まったものの、約5万5000人が住居を失い、市民生活に暗い影を落とす。

◆生活再開

 「生活を取り戻すため、今日から店を開けている」。ガザ市の洋服店モハンマド・ガッザウィさん(26)は電話取材に、こう説明した。空爆では親友と近所の一家4人を失い、自身もけが人搬送に携わった。「空爆が終わってうれしい気持ちと、大きな悲しみが胸の中にあふれている」と話した。
 空爆が集中したアルワハダ通りで土産物店を営むターレク・アブダイヤさん(42)は取材に「イスラエルには『もう十分だ』と言いたい。被害を受けるのはいつも市民だ」と嘆いた。2014年のイスラエルのガザ地上侵攻で破壊され地域は、一部でまだ再興していない。アブダイヤさんは「復興する前に、新たな空爆でまた壊された。もう終わりが見えない」と話した。

◆インフラ破壊

 今回の空爆ではインフラが集中的に破壊された。ガザ市によると、水道管や主要道路、下水処理場などが損壊。汚水が海に流れ込み、海が「汚水の湖」(市職員)状態という。道路が破壊されてごみ収集ができず、1日約500トンのペースで市街地にごみがたまり、衛生面が悪化している。
 市緊急委員会のアブドルラヒーム・カンバズ氏(42)は取材に「過去の空爆とは異なり、今回はインフラ設備が狙われた。人口約70万人のうち40%が水を確保できない状態だ」と話す。

21日、パレスチナ自治区ガザで、復旧作業を進める関係者=ガザ市提供

 ロイター通信によると、今回の空爆で産業に約4600万ドル(約50億円)、農業に約2700万ドル(約29億円)の損害が出たという。

◆人道支援

 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)パレスチナ事務所などによると、空爆で住宅約1万6800戸が被害を受け、約5万5000人が住居を失った。国連運営の学校58校を避難所として開放するが、食料や水、燃料が足りず支援が追いつかないという。
 21日からはイスラエルがガザ境界の検問所を開けたため、支援物資の搬入が可能になった。サミー・メシャーシャ所長(60)は取材に「何もかもが足りない。ガザの人々を助けるため寄付をお願いしたい」と訴えた。支援には少なくとも3800万ドル(約41億円)が必要という。

◆イスラエル

 一方で、イスラエル側の被害も大きい。ハマスはイスラエル各地に約4400発のロケット弾を発射し、イスラエル軍は「9割を迎撃した」とするが、ビルや住宅などが過去にない規模で被害を受けた。けが人も約400人に上る。
 攻撃が集中した商都テルアビブの旅行会社店員ジーさん(41)は取材に「攻撃のせいで数日間は店を閉じたので、停戦してよかった。地域に平和が訪れ、お互いに攻撃する必要がなくなってほしい」と言葉少なに話した。ホテル従業員の男性は取材に「停戦は少なくとも観光と商売のためにはよかった」と話した。

◆くすぶる火種

 また、停戦初日の21日、東エルサレムのイスラム教とユダヤ教共通の聖地では、パレスチナ人と警官隊の衝突があり、約20人が負傷した。衝突の再燃の火種はくすぶり、状況は予断を許さない。停戦までにガザでは248人、イスラエルでは13人が死亡。ヨルダン川西岸では治安部隊との衝突で20人以上が死亡した。

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