<くるみのおうち>(9)みんなの居場所 出会い、つながる拠点

2021年5月23日 07時14分

専門家やボランティアの力を借りて、耐震補強や壁抜きなどが行われた「くるみのおうち」=中原区で(太田修嗣さん提供)

 自閉症など発達障害のある当事者や家族、支援者の輪が広がる中で、二つの課題が出てきました。一つは、活動場所は公共施設が中心でしたが、当事者の中には初めての場所や人混みが苦手な人がいること。もうひとつは、地域の人たちを活動に巻き込むのが難しいことでした。
 障害のある人と地域の人が、当たり前に触れ合える機会を創りたいという思いから、拠点となる物件を探し始めたのは、NPO法人の設立から五年がたったころでした。
 障害のある人の生活は、自宅と福祉施設の往復というパターンになりがちです。障害のあるなしにかかわらず、多くの人にくつろいでもらえる居場所にするためには「駅から遠くない」「コミュニティースペースが十五畳以上あること」などが必要。しかし、地価の高い川崎市幸区、中原区で見つけるのは至難の業でした。
 約半年かけて二十軒以上の物件を検討し、とうとう中原区上平間に築五十年の一軒家を見つけたのです。二階に住みながら、一階の約六十平方メートルをみんなの居場所にする。そんな青写真を描いて二〇一九年春、思い切って購入しました。
 建物が老朽化していたため、専門家やボランティアの力を借りて、耐震補強や壁抜き、壁紙の張り替えなど、自分たちでできることをするDIYイベントを開催。これまでくるみの活動を応援してくれた延べ百二十人が結集し、ほぼ一年かけて居場所づくりに取り組みました。
 昨年二月、この活動拠点兼事務所を「くるみのおうち」と名付け、開所式を行いました。特別支援学校の高等部を卒業し、福祉施設で働き始めた息子も「お役に立てるよう頑張ります」とあいさつしました。
 会場では、くるみ名物の「壺(つぼ)焼き芋」を振る舞いました。皆さんの笑顔を見て「特別なことは必要ない。人とつながり、安心できる居場所があることが大切なんだ」と実感しました。
 拠点の運営には資金が必要です。そこで認定NPO法人まちぽっと(東京都新宿区)の休眠預金を活用した助成事業に申請。審査会で「一人ひとりがその人らしく、豊かに生きられる社会を創りたい」と訴えました。その結果、無事採択され、三年間の助成を受けられることになりました。
 さあ、人と場所、資金がそろった。「くるみのおうち」での事業を本格的に展開していこう!という時に、コロナ禍が襲いました。 (太田修嗣・NPO法人「くるみ−来未」理事長)
 ◆次回は30日に掲載予定
 ご意見・ご感想は、川崎支局(電子メールkawasaki@tokyo-np.co.jp)へ。

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