コロナ禍の生活苦で急増した「街娼」 摘発より福祉へ 警視庁が取り組み

2021年5月24日 06時00分
「街娼」とみられる女性(右)に声を掛ける捜査員=東京都新宿区で

「街娼」とみられる女性(右)に声を掛ける捜査員=東京都新宿区で

 街頭で買春客を待つ女性を福祉につなぐ取り組みに、警視庁が乗り出している。売春防止法で摘発しても起訴までには至らず、貧困を抱えるなどし、再び街頭に立つケースがあるためだ。コロナ禍で生活費を稼ぐために舞い戻ってしまう女性もいる。悪循環を断つため、新宿・歌舞伎町の夜を見回る捜査員の姿を追った。(佐藤大)

◆普通の待ち合わせに見えるけど…

 今月14日午後7時ごろ、歌舞伎町近く、フットサルコートなどがある区立大久保公園周囲の小路のあちこちにたたずむ女性の姿があった。スカートやワンピース姿で、ごく普通の女性が待ち合わせで立っているようだった。
 捜査員は「あの子らは、恐らく街娼がいしょうですね」とつぶやく。20代前半ぐらいの女性に捜査員は「客」を装って声を掛けた。声掛けに応じると、捜査員は、この女性を近くの建物に案内し事情を聴いていた。
 記者は別の女性の話を聞く機会があった。「しばらく(売春を)やってなかったんだけど、コロナ禍で、支払いが待ってくれなくて…」。ショートカットにハンチング帽をかぶり、シックなスカート。口調は穏やかだ。売春をすることへの後ろめたさは感じさせなかった。

◆一度に20~30人立っていたことも

 捜査員によると大久保公園周辺にはいつからともなく、女性が立ち始めたという。周辺に安価なラブホテルが多く、ネット上で「立ちんぼスポット」として伝わったことが理由とみられる。多い時には1度に20~30人が立っていたこともあったという。
 この地区でこうした女性の摘発は一昨年、延べ53人。全国で摘発された4分の1近くを占めた。それでも、街頭に立つ女性は絶えない。
 警視庁は昨秋から、取り締まりと並行して指導を始めた。捜査員が街頭に立つ女性らに声を掛け、近くに準備した室内に移動。これまでの売春経験や金銭状況などを聞き取る。

◆生活保護知らない女性も

 女性の了解が得られれば後日、新宿区生活福祉課など自治体の福祉窓口に同行する。そこで女性支援施設への入所や生活保護の申請につなげている。
 売春防止法は1956年、売春する女性の保護更生を目的に制定された。刑の執行を猶予する時に「補導処分」に付することができるとし、「婦人補導院」に収容し更生のための必要な補導を行うと規定している。
 同法を巡っては、売春に応じた男性は処罰されないことなどから、法律の抜本的な見直しを求める声もある。警視庁は、男性側にも買春しないよう街頭で注意を促している。
 捜査員はこう言葉に力を込めた。「生活保護について知らない女性もいる。現場でできることをやりたい」

 婦人補導院 売春防止法第5条(勧誘等)の罪を犯して「補導処分」に付された「満20歳以上の女子」が収容されると規定された国立の施設。刑の執行を猶予する時に「補導処分」にすることができ「婦人補導院」で更生のための必要な補導を行うと規定している。補導処分の期間は6カ月。全国で東京婦人補導院(東京都昭島市)だけがあり収容者は近年、ほとんどいない。法務省によると、2009年以降は計4人にとどまる。摘発されても起訴されないケースが増えていることが背景にあるとみられる。

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