80万人犠牲のルワンダ大虐殺「フランスにも重大な責任」 マクロン大統領が歴代政権で初めて認める

2021年5月24日 17時00分
 「フランスにも重大な責任がある」。1994年にアフリカ中部ルワンダで約80万人が犠牲になった民族大虐殺を巡り、マクロン仏大統領が設置した専門家委員会の報告書が今春に公表され、歴代政権が認めてこなかった国家の責任を初めて指摘した。関与の度合いは十分に解明されたとは言えないが、在仏ルワンダ人らは緊張が続いていた祖国とフランスとの新たな関係の構築を期待している。 (パリ・谷悠己)

17日、パリを訪問したルワンダのカガメ大統領(左)と出迎えたマクロン仏大統領=AP

 「フランスが責任を認めたのは大きな一歩。ともにエピローグ(終局)にたどり着く努力をすべきだ」
 今月18日にパリで開かれたアフリカ経済問題の国際会議に参加したルワンダのカガメ大統領は、仏紙ルモンドにこう述べた。

◆大虐殺の可能性を黙認

 歴史専門家らの委員会が一昨年から調査し今年3月末に公表した報告書は、多数派民族フツ人が少数派民族ツチ人を虐殺する可能性を知っていたフランスには、黙認した責任があると認定。黙認の背景には、虐殺事件直前に暗殺されたフツ人のハビャリマナ大統領と親密だった当時のミッテラン仏大統領の意向が大きかったと結論付けた。
 報告書は、仏軍が90年代初頭からフツ人主体のルワンダ軍を育成してきた事実を指摘する一方で、虐殺被害者側のツチ人反体制グループ司令官だったカガメ氏らが主張してきた仏軍による虐殺行為への関与については「直接的な証拠がない」として否定した。
 カガメ氏は2000年の大統領就任以来、国交を一時断絶するなどフランスに厳しい態度を取ってきただけに、責任を認定しながら共犯性を否定した報告書を評価したことは、大きな方針転換といえる。
 マクロン氏も月内のルワンダ訪問を発表した。過去の大統領ではサルコジ氏のみが同国を訪問。フランスによる「判断の誤り」を認めながら責任には言及せず謝罪もなかっただけに、マクロン氏が発する言葉に注目が集まっている。

◆大きな前進だが「完璧とは言えない」

 両首脳の歩み寄りの一方で、仏国内の被害者団体は冷静に受け止めた。
 「過去に比べると大きな前進だが、完璧な報告書とは言えない」。虐殺被害者の自助団体「IBUKA」仏支部代表のエチエンヌ・ヌサンジマナさん(44)はこう話す。専門家委員会は、大虐殺が起きる契機となったハビャリマナ大統領暗殺事件や、仏軍がツチ人に対し十分な支援をしなかったとされる問題などの資料に当たっていないためだ。
 フランスの植民地主義を検証する市民団体「SURVIE」のダビド・マルタンさん(44)は「政治家ら個人の責任に踏み込んでいない報告書が、外交関係を正常化する材料に使われるならば残念だ」と語る。
 報告書の公表に政治的な背景を指摘する声も。社会党政権の閣僚だったマクロン氏は来年の大統領選での再選をにらみ、弱体化する社会党支持層より保守派支持層の取り込みを重視している。ルモンド紙によると、一度は出席の意思を表明したミッテラン氏の大統領就任40周年行事(5月10日)も回避した。今回の報告書を「ミッテラン氏や社会党との決別を象徴している」とする見方がある。
 「フランスに抱いてきた複雑な感情が、この報告書で少し和らいだ」。虐殺事件を機に祖国を逃れ、5歳からパリで暮らすジャンさん(28)はこう語った。
 育ての国が祖国で母方の親族の6割を虐殺したフツ人政権を擁護し、責任も認めていないという事実を思春期に知った時には「絶望的な思いがした」だけに、関係改善を目指す両国の姿に「新しい風を感じる」という。「今後はビジネス交流も盛んになると思う。両国がウィンウィンの関係を築けるよう法律面で支えられれば」。弁護士を目指すジャンさんの今の夢だ。

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