五輪と国民との分断の日…丸川五輪相、IOCのコーツ委員長に感じた「自分ファースト」

2021年5月25日 19時39分
 東京五輪・パラリンピックを巡り、私は5月21日、丸川珠代五輪相と国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長の記者会見で2つの質問をした。「損失の補塡ほてんは東京都」「緊急事態宣言下でも開催? イエスだ」―。2人から返ってきたのは、いずれも「自分ファースト」を前面に出した答え。私は、五輪と日本国民の分断が決定的となる瞬間に感じた。(原田遼)

記者会見するIOCのコーツ調整委員長(モニター内)。右は東京五輪・パラリンピック大会組織委の橋本聖子会長=5月21日、東京都中央区

◆「中止を選択肢に」

 私はこの日、午前9時半から丸川氏の閣議後会見に、午後7時半から国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会の合同会見に出席した。
 丸川氏の会見では、本紙が5月の幹事社を務めているため、慣例に従い、最初に指名された。質問はこうだ。「国民の安全を考えれば、東京五輪の中止を選択肢に入れ、どういう状況になれば中止にせざるを得ないとか、中止に伴う財政的なリスクはどれくらいあるのか、協議するべき時期に来ている。中止を選択肢に入れないのはなぜか」
 この日の時点で9都道府県に新型コロナウイルス緊急事態宣言が出ており、五輪が開かれる2カ月後の感染状況や医療のひっ迫は深刻になる危険性は十分にある。中止を選択肢に入れないのは無責任と感じたからこそ、見解を求めた。

丸川珠代五輪相

◆中止の損失「東京都が補填」

 丸川氏は質問に「東京大会のあり方については主催者であるIOC、国際パラリンピック委員会(IPC)、東京都、組織委において最終的に決定される。政府としては引き続き安全安心を最優先に、関係者と緊密に連携して大会準備を着実に進める」。過去何度も聞いた受け答えをした後、突然、中止後の費用分担に言及した。
 「都がIOCに提出した立候補ファイルには、組織委が財源不足に陥った際は都が補塡するとある。都の財政規模を踏まえると、補塡できないという事態はおよそ想定しがたい」と、国が損失分を補填することはないとの考えを示した。
 さらに「中止しなければいけないと思っている方と、やるための努力をしている方とで物の見方が違う。同じ言葉で説明してもなかなか伝わらない」とも。私は、約4分間にわたる丸川氏の答えを虚しく感じながら聞いた。

◆小池知事へのけん制か?

 実は質問は、会見の前日夕方に広報に伝えていた。これも慣例で「幹事社の質問は前日までに通達する」とされているからだ。つまり丸川氏は半日以上、回答を熟慮する時間があったにもかかわらず、質問に正面から答えず、費用分担に問題をすり替えた。
 最近、「小池百合子都知事が五輪中止を言い出すのでは」という臆測が広がっている。丸川氏の発言には、中止するなら「損失補填は都の責任だ」とけん制する意味があったのかもしれない。数時間後、小池氏が補塡に対し「協議が必要」と反論し、2人の「論戦」が注目の的になった。
 丸川氏の答えからは、政府としてはあくまで中止は選択肢になく、仮に中止となっても責任を取るつもりはないとの姿勢がにじみ出ていた。
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