ミステリーな都市・としま 初公開 江戸川乱歩賞 池袋で贈呈式

2021年5月26日 06時59分

邸宅の土蔵内で本を読む江戸川乱歩(立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター提供)

 アニメや漫画といったポップカルチャーの発信地・豊島区は、ミステリーとのゆかりも深い。日本の推理小説を切り開いた江戸川乱歩(1894〜1965年)の邸宅も区内にあった。11月にはミステリー界の登竜門、第67回江戸川乱歩賞(一般社団法人日本推理作家協会主催)の贈呈式が、東池袋の区立芸術文化劇場で初めて一般公開される。同区とミステリーのミステリアスなつながりを探った。
 乱歩は一九三四(昭和九)年から七十歳で死去するまでの約三十年間、池袋で生活。現在は立教大の江戸川乱歩記念大衆文化研究センターとして、乱歩らが残した約二万五千冊を所蔵する。乱歩賞受賞者は、ここに受賞の報告に訪れる。
 こうした縁をきっかけに、これまで作家や出版関係者らだけで開かれてきた贈呈式が、区民や読者に公開されることに。開催は十一月一日の「としま文化の日」を予定。一部運営費も区が負担する。キックオフイベントも区内で予定されている。
 今月開かれた会見では、同協会の京極夏彦代表理事が「もっと(作家や出版社などが)発信できなければならないのでは、と考えてきた。業界内だけで盛り上がっても仕方がない。正々堂々と(ミステリーを)世に知らしめていく」と強調した。

池袋のミクサライブ東京で江戸川乱歩賞と豊島区の連携について会見した京極夏彦さん(手前)と豊島区の高野之夫区長

 今までのように金びょうぶ前であいさつするかしこまった贈呈式とは異なるという。池袋で古書店を営んでいた高野之夫区長は、「ぶれずにやってきたのが文化による街づくり。文学に光を当てながら広く、発信する」と意気込む。
 乱歩に限らず、区ゆかりのミステリー作家は少なくない。大下宇陀児(おおしたうだる)(※1)は乱歩とほぼ同時期に池袋で暮らし始めたほか、飛鳥高(たかし)(※2)は偶然にも乱歩邸の隣に住まいを構えた。そもそも同協会の前身「日本探偵作家クラブ」は乱歩を訪ねる若手の作家や編集者らが増えたことで発足した。区内では文学的な交流が活発に行われてきたのだ。泡坂妻夫(あわさかつまお)(※3)も大塚で暮らしていた。

池袋の旧江戸川乱歩邸

邸内には乱歩らの蔵書も (立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター提供)

 京極さんの「姑獲鳥(うぶめ)の夏」や、石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパーク」など区内を舞台にした作品もある。二〇一九年七月までの約二十年間は池袋に「ミステリー文学資料館」もあった。
 「池袋は戦前、大きな街ではなく、乱歩も静けさを求めて引っ越してきた。作家が集中しやすい、暮らしやすい場所だったのでしょう」と、文学を担当する区の西方ゆり恵学芸員。その上で、「現在の区は多様な人が行き交い、集まる場所になっている。静かなエリアも残り、さまざまな表情が混在している。そのはざまにミステリーが生まれる土壌があるのかもしれません」。
※1 一八九六〜一九六六年。乱歩と同世代の探偵小説家。代表作に「石の下の記録」など
※2 一九二一〜二〇二一年。代表作に「細い赤い糸」など
※3 一九三三〜二〇〇九年。「蔭桔梗」で直木賞

◆ミクサライブ東京 新たな文化の発信拠点

 江戸川乱歩賞についての会見が行われたのは、昨年池袋に誕生した複合施設ビル「ミクサライブ東京」。ミュージカルやライブなどエンターテインメント発信拠点として注目されている。
 地下二階、地上九階。ゲームセンターが入る一〜三階を除く延べ床面積約二千八百平方メートルに、講談社やキングレコード、テレビ東京、ブシロードなどさまざまなエンタメ会社が運営する四ホールやライブカフェ、ショップなどが入る。
 当初は昨年三月にオープン予定だったが、コロナ禍で延期になった。六月から無観客ライブの配信などで稼働し始め、八月には全フロアに5G(第五世代移動通信システム)のネットワーク環境を構築するなど配信機能を強化した。
 講談社事業開発部プランナーの高野雄二さんは「コロナの感染防止から、役者一人による『ひとりしばい』といった新しい取り組みもミクサライブ東京で生まれている。ポップカルチャーの発信地・池袋から、漫画やアニメ、小説、ファッションなどさまざまなコンテンツをライブに変換させていく」と説明する。
 文・中村真暁/写真・池田まみ
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