介護とテレワーク 難しい両立 負担感と不安増し疲弊 職場は孤立させない配慮を

2021年5月26日 07時18分
 新型コロナウイルス対策として取り入れる企業が増えたテレワーク。「仕事と介護の両立もしやすくなる」と語られることが多いが、逆に「介護の負担感が増す」と懸念する声もある。企業は、テレワークをしながら家族を介護する人に配慮し、必要に応じて負担感を減らす対応を取ることが大事だ。 (佐橋大)
 「ウェブ会議システムで仕事相手と話している途中に、認知症の父親に何度も話し掛けられ、中断せざるを得ない」「介護している親から何度も呼ばれるので、まとまった仕事は深夜にしている」−。介護セミナーなどを開くNPO法人「となりのかいご」(神奈川)が介護者から受けた相談の一例だ。コロナ禍が広がった昨年三月以降に寄せられた約四百件のうち、テレワーク関係は二十四件。代表理事の川内潤さん(40)は「顕在化していない問題も多いはず」と指摘する。
 「一日二十回以上、トイレに付き添わなければならない」という男性はテレワーク中、母親に呼ばれてトイレに連れていっても用を足さないため、ストレスを抱えていた。「出社すれば、介護から離れる時間をつくれるが、テレワークだと一日中、関わりが続くため、介護する人は疲弊してしまう」と川内さん。介護が必要な高齢者らは、家族が近くにいると助けを求めがちだ。そのたびに応じる家族もいるが、高齢者の自立を奪う危険性があるため、過剰な支援は控えたい。
 一方で、認知症などの症状が進むとともに、介護の手間は増大していく。それでも介護する人が「自分でできる」「自分がやらなくては」などと周りを頼らずにいると、精神的にも肉体的にも参り、介護離職をすることにもなりかねない。川内さんは「『プロに任せるところはプロに任せる』という意識を持つことも大事」と提言する。
 ◇ 
 四月中旬、川内さんは、テレワークを研究しているパーソル総合研究所(東京)上席主任研究員の小林祐児さんとの対談イベントをウェブ上で開き、企業の人事担当者ら三十四人が耳を傾けた。
 小林さんによると、多くの企業はテレワークについて自社の方針を示さず、「やりたい人は適当に」などと従業員の自主性に委ねている。こうした状況では、テレワークをする人が社内で「取り残されている」「評価されていないのでは」などと疑心暗鬼に陥りやすい。さらに「テレワークなら常に家族のそばにいられて、介護と仕事が両立できる」との決めつけが、介護する人を追い詰めるという。
 同研究所の調査では、テレワークの頻度が高い人ほど、介護時間が長い。介護をしているテレワーカーの方が、介護をしていないテレワーカーより不安が強いことも分かった。「お父さんの介護ができて良かったね」といった周囲の声掛けが、介護者に「大変さが理解されていない」と思わせることも。小林さん、川内さんともに「テレワークで介護する人が取り残され、介護離職のリスクが高まる」と危機感を募らせる。
 介護する人の孤立感や負担感を減らす方策は。小林さんは「まずは企業が、テレワークをしただけで評価をマイナスにしないといった方針を示すこと」と強調する。テレワークをすることへの不安を解消した上で、困ったときは地域包括支援センターなどの窓口に相談するよう、上司が呼び掛けるといいという。

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