<新型コロナ>ワクチンを接種される人のポーズが変わったのはなぜ? 最近は腕を下ろすのが主流に

2021年5月26日 09時56分
 新型コロナウイルスワクチンの接種が本格化している。2月の国内初接種が報じられたとき、接種される人は肘を曲げ腰に手を当てていた。このポーズは厚生労働省が2011年に策定した新人看護職員研修ガイドラインに定めた上腕への筋肉注射の方法だ。ところが、最近は、腕をまっすぐに下ろした状態で接種を受けている人がほとんど。何か違いがあるのだろうか。(増井のぞみ)

◆腰に手を当てると接種部位が分かりやすいが…

肘を曲げて腰に手を当てた状態でワクチン接種を受ける医療関係者=2月17日、東京都目黒区で

 国内であまり行われてこなかった筋肉注射によるワクチン接種が2月17日、東京都目黒区の東京医療センターで始まった。院長や看護師らはガイドライン通り、左手を腰に当てる姿勢で、腕の上部にある三角筋に注射された。ガイドライン策定に関わった専門家によると、この姿勢だと、三角筋が盛り上がり、接種部位が分かりやすいという。
 しかし、接種の様子をテレビ報道で見た奈良県立医科大講師で整形外科医の仲西康顕さん(43)は「橈骨とうこつ神経を刺す危険性がある」と驚いた。橈骨神経は手首や指を伸ばす筋肉に脳からの命令を伝える。この神経が損傷し、まひすると手がしびれたり、動かなくなったりする。腰に手を当てると、腕の後方にある橈骨神経が前方に出てくるため、仲西さんは誤って神経に注射する可能性を指摘する。
 日本医療機能評価機構によると、筋肉注射による橈骨神経障害の報告は最近10年に2件。仲西さんは「症例は極めて少ないが、回復しにくい場合もある。1人でも患者を増やしたくない」と筋肉注射マニュアルを作り2月25日からウェブに順次公開した。
 一方、愛知県蒲郡市の家庭医療・感染症専門医の中山久仁子さん(50)ら日本プライマリ・ケア連合学会ワクチンチームも腕を下ろす筋肉注射の動画を作り3月15日に公開した。その翌日、菅義偉首相が腕を下ろした状態で接種する様子が報じられた。「ホッとした」と中山さん。

腕を下ろした状態でワクチンの接種を受ける菅首相=3月16日、東京都新宿区で

◆厚労省は接種ガイドライン見直しへ

 こうした動きもあり、厚労省も4月2日、腕を下ろし接種することを勧める動画を公開した。動画は中山さんらが監修。制作した研究班のメンバーで国立がん研究センター中央病院感染症部長の岩田敏さん(69)は「奈良医大やプライマリ・ケア連合学会の『より安全に』との意見を踏まえた。米疾病対策センター(CDC)のガイドラインのイラストも腕を下ろしており参考にした」と話す。
 3月ごろには腰に手を当てる方式と腕を下ろす方式が混在していたが、いまは下ろす方式が主流になった。厚労省看護課も「ガイドラインを見直す準備を進めている」と話す。厚労省によると、これまでに新型コロナワクチン接種による橈骨神経障害の報告はない。

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