大正から令和のアイドル 胸キュン聖地 プロマイドの浅草「マルベル堂」100年

2021年5月27日 07時02分

プロマイドの100年の歴史について話すマルベル堂の武田仁店長

 数多くのアイドルや映画スターの写真を販売している浅草の「マルベル堂」が今月、創業百周年を迎えた。日本で唯一の“プロマイド”専門店として、今もスターとファンをつないでいる。

店内には芸能人のサインがいっぱい=いずれも台東区浅草で

 美空ひばり、郷ひろみ、松田聖子−。浅草新仲見世商店街にある年季の入った店に入ると、天井まで張られたスターやアイドルの写真に圧倒される。
 受話器を持ってほほ笑む郷ひろみと目が合い、青春時代にタイムスリップしたような気分になる。
 「今でも西城秀樹さんはよく売れています」。店長で六代目カメラマンの武田仁さん(47)は語る。
 俳優や歌手のコレクション用の写真はブロマイドと言われるが、マルベル堂で売られているものは「プロマイド」と呼ばれる。
 ブロマイドは印画紙の種類を指す言葉で、マルベル堂の写真は、写真のL判より縦が少し長いオリジナルサイズ。専属のカメラマンが撮影したものがプロマイドとなる。
 その特徴はサイズだけではない。
 被写体のスターはアップでカメラ目線。両手をあごの下で花のように開いたり、人さし指でほおを軽くつつくなど、手を使ったポーズは「マルベルポーズ」として定番。
 「カメラマンの個性はいらない」
 十六年前に入社し、現在は専属カメラマンとしても活動する武田さんは、先輩から撮影の鉄則をたたき込まれた。
 「プロマイドはファンのためのもの。スターと目が合ったように思わせろと教えられた。簡単だと思ってマルベル堂で働き始めたが、この鉄則になじめず辞めたカメラマンも多い」と武田さん。

創業当時のマルベル堂(同店提供)

 マルベル堂は、洋食店を営んでいた三ツ澤実四郎さんが一九二一(大正十)年五月五日に創業した。第一号は、当時の人気女優、栗島すみ子。
 三ツ澤さんは外国映画のスチールや俳優の写真を集めるのが趣味で、日本のスターの写真を専門で販売することを思いついた。
 芸能の聖地・浅草は劇場や映画館も多く、長谷川一夫など銀幕スターのプロマイドが人気を集めた。
 戦後、ひばりや舟木一夫など歌手のほか、天地真理やピンク・レディーなどアイドルが登場。
 雑誌にはマルベル堂のプロマイドの売り上げが掲載され、人気のバロメーターでもあった。

第1号は栗島すみ子(マルベル堂提供)

 これまでマルベル堂で撮影した俳優や歌手は約二千八百人。約八万五千枚分のネガが保管されている。
 江戸川大学の西条昇教授(アイドル論)は「スターを応援する文化は江戸時代からあり、歌舞伎役者を描いた浮世絵は女性たちに人気だった」と指摘。「写真でも好きなアイドルやスターを近くで見たいというファンの思いの表れ」と人気の秘密を説明する。
 最近はパソコンやインターネットなどデジタルの普及で需要は減りつつある。全国のファンに届けようと、インターネットの通信販売にも力を入れる。
 今年四月にはロックバンド「氣志團」が「メイジャーデビュー二十周年」を記念してプロマイドを販売し、若い世代から脚光を浴びている。
 SNSにはプロマイドとともに「額縁に入れて飾ります」と書き込むファンもいた。
 撮影を担当した武田さんは「うれしい」と喜ぶ。
 「スターの写真が手元にある喜びを感じてもらえた。時代が変わってもプロマイドの良さは変わらない」
 ◇
 マルベル堂は現在、緊急事態宣言発令に伴い休業中。プロマイド通信販売サイト「昭和スター倶楽部」でも購入できる。また、東京タワー(港区)で三十日まで「マルベル堂100周年記念展」を開催中。
 文・砂上麻子/写真・安江実
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