コロナ禍の面会制限「救いはネットだった」 入院病室にWi-Fiを、笠井信輔さんら訴え

2021年5月27日 07時25分

病室内のWi−Fi環境整備を訴える笠井信輔さん(中央)ら=笠井さん提供

 コロナ禍で病院での面会制限が広がる中、入院患者たちにとって、インターネットで外部とつながることが心の支えになっている。一方で、通信費がかからない無線LAN(Wi−Fi)を使えない病院も。悪性リンパ腫で長期入院を経験したフリーアナウンサーの笠井信輔さん(58)や患者から、病室内でのWi−Fiの利用拡大を求める声が上がっている。 (細川暁子)
 「見舞客が来ない中、入院患者にとってWi−Fiはライフラインです」。先月下旬、笠井さんは東京・霞が関の厚生労働省で記者会見し、こう訴えた。
 笠井さんは昨年四月末まで約四カ月、都内の病院に入院。家族以外は面会できず、友達から提案されたオンライン見舞いや、自身のブログや会員制交流サイト(SNS)への応援コメントを読んで気持ちを奮い立たせた。「孤独を救ってくれたのはネットだった」。ただ、病室内でWi−Fiは使えず、スマートフォンの通信料は入院前より月一万円ほど多くかかった。
 退院後、同じようにWi−Fi整備を望む全国骨髄バンク推進連絡協議会(東京)顧問の大谷貴子さん(59)や患者と出会い、今年一月に八人で「#病室WiFi協議会」を結成。三月、入院経験のあるがん患者ら五百九十四人を対象に調査したところ、「病院内でインターネットを使えた」と答えた三百三十八人のうち、病院のWi−Fiを使ったのは36%だけだった。通信業者や総務省などでつくる電波環境協議会が昨年、約千百の病院から回答を得た調査でも、約八割が「無線LANを導入」と答えたが、「患者や訪問者らのネット接続用」は三割未満にとどまった。
 笠井さんらは国会議員らに面会し、改善を要請。厚労省は先月、医療機関の新型コロナ感染拡大防止のための補助金に、患者用のWi−Fi整備費用を加えた。一病院あたり二十五万円に、一病床につき五万円を追加して補助。希望する病院は九月末までに申請が必要だ。笠井さんは「授業をオンラインで受ける子や、遠隔の手話通訳者の立ち会いが必要な聴覚障害の患者さんもいる。各病院が補助金を活用し、ネット環境を整えてほしい」と話す。

◆導入病院 オンラインお見舞いも

病室でWi−Fiが使えることを知らせるポスター=名古屋徳洲会総合病院提供

 愛知県春日井市の名古屋徳洲会総合病院は、二〇一四年に病院を新築したのを機に、従来の外来棟に加え、入院病棟三百五十床でも無料でWi−Fiを使えるようにした。同じ周波数の電波が影響を与え合い、つながりにくくなる電波干渉を防ぐため、医療機器を扱う臨床工学技士二十六人と、システム担当者らが連携。患者用と、電子カルテなどを管理する業務用の周波数を分け、担当者らが電波干渉に関する総務省の勉強会に出席するなどもして通信環境を整えた。
 亀谷良介院長(49)は「コロナの影響で面会制限が続いていることは、医療者として申し訳ない思い。そんな中でオンライン面会などネットは患者さんに欠かせず、結果的にコロナ前から整備しておいて良かった。患者さんが治療についての情報を集めるためにも、ネットは重要」と話す。
 情報通信が専門の慶応大特任教授の川森雅仁さんによると、患者が自分でWi−Fiルーターを持ち込むと、病院の業務用Wi−Fiと干渉する恐れがある。「院内の電波の混乱を抑えるためにも、病院が患者用にWi−Fiを整備し管理する方がいい」と指摘する。

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