ワクチン打ち手どう確保? 臨床検査技師に救急救命士…医療関係職種を総動員すれば本来の持ち場が逼迫、のジレンマ

2021年5月28日 06時00分
 新型コロナウイルスのワクチン接種の加速化に向けて、政府が新たな「打ち手」の確保に躍起になっている。特例で接種を認めようとしているのは、人の体に針を刺すことに慣れている救急救命士や臨床検査技師。しかし、既にコロナ禍で多忙を極めている職種でもあり、どこまで携われるかは未知数。菅義偉首相が掲げる「1日100万回」の達成につながるかは見通せない。(井上峻輔)
 臨床検査技師と救急救命士によるワクチン接種の検討は、加藤勝信官房長官が25日の記者会見で発表した。どちらも本来は法的にワクチン接種は行えない職種だが、今回は特例として認めたい方針だ。

◆まだ1日40万余、接種遅れでなりふり構わず

 背景には打ち手不足による接種の遅れがある。首相官邸の発表によると26日の全国での接種数は約42万回。「1日100万回」の半分にも満たない。
 医師や看護師以外に打ち手を広げる動きは、既に始まっている。4月には、普段から麻酔注射などを行っていることから、歯科医師に接種が認められた。医師の関与の下で行うことや、事前に研修を受けること、接種を受ける人の同意を得ることなどが条件になっている。
 新たに検討される臨床検査技師は検査のために採血をする仕事で、救急救命士は救急車の中で点滴を行っている。どちらも法的に認められれば、接種の技術的なハードルは高くないと見られる。それぞれ20万人、6万4000人の免許取得者がおり、首相は打ち手として「数万人を確保したい」と見込む。

◆医療従事者接種すらまだ…目標到達は6月中旬か

 しかし、どちらもコロナ禍の中で通常業務が逼迫ひっぱくしている職種だ。一般社団法人「日本救急救命士協会」の鈴木哲司会長(鈴鹿医療科学大教授)は「緊急事態宣言が出ている都道府県では、現場に支障を来さないように慎重に行うべきだ」と指摘し、救急救命士の活用には自治体の状況を考慮するべきだと訴える。
 打ち手以外にも、政府は薬剤師にワクチンの準備、診療放射線技師に接種後の経過観察などで協力を依頼する。法的に医師でなければ行えない接種前の予診については、タブレット端末や電話を使った「オンライン予診」も可能であることを自治体に周知して、現場に行けない医師の活用を図る。
 それでも医療従事者へのワクチン接種すら終わっていないのが現状。政府内では、1日100万回に達するのは「6月中旬」(政権幹部)との見方も出ている。

関連キーワード

PR情報

政治の新着

記事一覧