<月刊 SDGs 2021年5月号>途上国「留職」でリーダー育成

2021年5月29日 07時20分
 国連のSDGs(持続可能な開発目標)の目標8は「働きがいも経済成長も」。ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)がキーワードとなる。
 NPO法人クロスフィールズ(東京都品川区)は、途上国のNPOなどで社会課題の解決に取り組む体験を通じて、次世代リーダーを育成する「留職プログラム」などを企業や自治体に提供している。
 小沼大地代表(38)は青年海外協力隊としてシリアで活動した経験を持つ。社会課題の解決には「心の熱量」が必要だった。自分の志を育むことにつながったと感じたことが、活動を始めるきっかけとなった。
 NECコーポレート事業開発本部マネジャーの安川展之さん(37)は2013年に、このプログラムで半年間、インドに滞在。職業訓練や少額融資などさまざまな形で農村を支援する現地の団体で働いた。
 村の「何でも屋」に文房具や日用品、食品を納品して回った。店主たちが収支の計算などにてこずっているのに気付き、安価な端末で利用できる情報管理システムを開発した。

◆働く意味 生きる意味 現地支援で原点回帰

 店主や同僚とともに肩を組んで撮った写真が安川さんの手元に残されている。持続可能な農村という共通の目標を持つ仲間。「NECは顧客と肩を組むというところまでできているだろうか」と自問したという。帰国後、インドで健康診断を普及する新規事業をNEC内に立ち上げた。

貝澤紗希さんが働くスタートアップ推進室にはSDGsの目標も掲げられていた=茨城県つくば市役所で

 茨城県つくば市役所の貝澤紗希さん(33)はジャカルタで農村支援の非政府組織(NGO)で働いた。現地の日本人コミュニティーとの関係づくりなどを依頼された。ゼロから自分で考える仕事のやり方が新鮮だった。NGOの女性リーダーの柔軟で前向きな姿勢にも影響を受けた。今は起業を支援するスタートアップ推進室で勤務する。「手探りで支援の方法を考える仕事なので当時の体験を生かすことができる」という。
 小沼さんは「ビジネスの世界の人に非営利の世界に行ってもらうことに大きな意味がある」という。「越境」することはなぜ働くのかや、なぜ自分は生きているのかという根本を見つめ直す機会になるという。
 本来、多くの仕事が何らかの社会課題解決につながっている。原点に立ち返ることは「働きがいのある人間らしい仕事」や、それを可能にする組織づくりの第一歩となるかもしれない。 (早川由紀美)

◆エシカル企業と就活マッチング 「アレスグッド」設立勝見仁泰さん

エシカル就活を進めるために会社を設立した勝見仁泰さん=東京都渋谷区で

 皆同じようなリクルートスーツを着て、企業が望む形に自分を合わせる。そんな就職活動に一石を投じる動きが生まれている。高千穂大学4年生の勝見仁泰さん(22)は、企業が環境や人権などに配慮しているか学生が判断できるよう情報発信をしたり、企業と学生をつなげたりするための株式会社「アレスグッド」(東京都新宿区)を設立した。「エシカル(倫理的)就活」で、一人ひとりが働きがいを持つことができる企業や社会に変えていくことを目指す。 (聞き手・早川由紀美)
 −大手企業の広報担当者から、最近の学生は環境問題などへの関心が高いので、就職説明会ではSDGsへの取り組みなどを丁寧に話すようにしていると聞いたことがあります。「エシカル就活」を思い付いたきっかけは。
 「高校3年の時に1人で訪れたフィリピンで、農家に話を聞く機会がありました。その年は記録的な豪雨や自然災害があり『農地がだめになり、生活が厳しい』と聞いたことをきっかけに、気候変動に興味を持ちました。実家が八百屋ということもあって、商い、ビジネスへのあこがれがあり、大学で経営学を専攻しながら国際開発学も勉強し、ビジネスで社会課題解決をしたいと思うようになりました」
 「1年間留学もして、途上国を支援できる化粧品事業を始めようと準備していたのですが昨年からのコロナ禍で頓挫しました。就活しようと思って情報収集すると『社会課題を解決したい』と言っていた人のモチベーションが下がっている。業種業界でしか選べないし、気候変動問題にどういうビジョンを持っているかなど、企業側の本音が分からない」

◆社会課題取り組む会社に「お墨付き」

 「ミスマッチが起きて、若者の早期退職にもつながっている。グリーンウォッシュ(環境にいいことをやっているふり)もある。将来を見据え、自分たちZ世代(1990年代中盤以降に生まれた世代)が、人や社会、地球環境のことを本当に考えている企業に『エシカル』というお墨付きを与える新しいプラットフォームを作りたいと思いました」
 −どんな活動をしているのですか。
 「昨年8月に気候変動をテーマに4社の人に話を聞くオンラインイベントを開きました。昨年11月はダイバーシティー(多様性)をテーマに2社が登場しました。合わせて300人ぐらいの学生が参加し、企業側のニーズも含めて手応えを感じました。昨年11月に株式会社にしました。自分を含めて男女5人の会社で、留学先や同じシェアハウス、インスタグラムなどで知り合った仲間です。社会課題解決に取り組む学生と企業をつなぐ就活サイトを始めました。複数の大学と一緒に、1年生の時から社会課題のビジョンやスキルを育てる教育プログラムも作っていく予定です」

◆Z世代が「内と外」から社会の壁壊す

 −活動を通じて、どんな社会にしたいですか。
 「自分たちの活動は外圧と内圧の二つの側面があると思っています。企業側に、見せ掛けのことだけしていたら良い人材は入らないですよという外圧と、志を持った学生が入ることで中から企業を変える内圧。ただ二項対立にしたいわけじゃない。若者対企業とか、男性対女性とか。どういうふうにしたらバリアフリーにできるかなあという話です。一人ひとりが自分らしく、輝けるようになればいい」
<かつみ・きみひろ> 1998年10月東京都生まれ。高千穂大学経営学部4年生。昨年11月、株式会社「Allesgood(アレスグッド)」を設立。アレスはドイツ語で「すべて」という意味。

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