管弦楽との融合図る  NY拠点に世界で活躍 挾間美帆(はざま・みほ)さん(ジャズ作曲家)

2021年5月29日 13時40分
 リズミカルで明るいジャズらしさの中に、管弦楽ならではの音の厚みが加わり、聴いていて楽しい−。それが、クラシックを奏でるような管弦楽団によるジャズ風の音楽「シンフォニック・ジャズ」だ。その可能性を追求し、米ニューヨークを拠点に世界中に活躍の場を広げているジャズ作曲家、挾間美帆さん(34)は「二つの音楽ジャンルの懸け橋となるのがライフワークです」と爽やかな笑顔で語る。
 「(日本に)帰ってくる頻度は年によってまちまち」という多忙ぶり。欧州へ向かう経由地として帰国した際、東京・池袋の東京芸術劇場で取材した。
 幼少時からクラシック音楽に親しみ、中でも曲づくりに引かれた。小学生にして作曲家を志し「好きだったNHKの大河ドラマの曲をつくりたいと思った」。東京・国立音楽大の付属中学に進み、高校、大学へ。
 ジャズとの出会いは大学時代、たまたまサークル活動で入った、大人数でジャズを演奏するビッグバンド。ピアノで参加し「本当に、即興で演奏するんだというところから始まった」。三年時に客員教授だったジャズピアニスト山下洋輔さんの作品の編曲を手掛ける機会を得、初演は佐渡裕さんの指揮で注目を集めた。
 一方、ゼミでは大河ドラマの参考にと映画音楽を学んだが、当時はコンピューターによる音づくりが主流。「パソコンのソフトウエアで音を打って、という手法は自分がやりたいこととは違うな」と感じた。「夢を見失ってしまった」四年時、サークルのビッグバンドで演奏していたようなジャズの曲を自らつくることに思い至る。クラシックのモーツァルトやベートーベンらと異なり、それらの曲の作者が存命だったことも刺激的に感じた。
 「好きな曲の作曲家に実際に会えば人生が変わるのでは」。安易な気持ちだったが、山下さんや佐渡さんの勧めもあり、ジャズの作曲を学ぼうと留学を決意。会いたい作曲家が教えている大学をいくつか受験した結果、門戸が開かれたのがニューヨークのマンハッタン音楽院大学院だった。
 ただ、周りはジャズを専攻してきた学生ばかり。クラシックを学んできた身としては、とまどうことも。それでも、「作曲は作曲。英語も全然話せなかったけど、歌ったり弾いたりすれば通じるから」と共通言語である音楽を通じ、ジャズの聖地になじんでいった。
 卒業後の活躍は目覚ましい。十三人編成のジャズ室内楽団「m_unit(エム・ユニット)」を率いて二〇一二年にアルバムをリリースし、世界デビューを果たす。一六年、米国の老舗ジャズ専門誌「ダウンビート」で、「ジャズの未来を担う二十五人」に選ばれ、一九年には三枚目のアルバムが世界で最も権威ある音楽賞・グラミー賞にノミネート。昨年、世界唯一のプロ・ジャズ管弦楽団であるオランダの名門メトロポール・オーケストラの常任客演指揮者に就任した。
 手掛けるシンフォニック・ジャズでは、一般的なジャズでは登場しないバイオリンやオーボエなどの管弦楽器を取り入れる。ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」が代表的だが、百年近く前の一九二四年の作品だ。「あれしかないと思われるのはもったいない」と、新風を吹き込む。
 ジャズの魅力である即興も生かした曲づくりで「ちゃんと書く部分と任せる部分のバランスが大事。どれだけ丸投げしてしまうかを考えての作曲は楽しい」。
 昨年は新型コロナウイルスの感染拡大が深刻なニューヨークでつらい思いも。「とてつもない勢いで病院に人が運ばれ、死んでいく。身近な人もいた。住んでいるのは恐怖だった」。親しい友人とも半年間で二人しか対面しなかったという中で「身体だけでなく、精神も普通で普遍であることの意義を考えさせられ、勉強になった」と語る。
 今年七月末にはプロデューサーを務める東京芸術劇場の企画「NEO−SYMPHONIC JAZZ at 芸劇」を予定。三回目となる今回は「色」がテーマで、タイトルに色が入った古今東西のジャズ作品を集める。「音楽を通して、さまざまな色彩を感じて楽しめる会にしたい」 (清水祐樹)

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